DFG%ランキングから見るセンターのディフェンスと“モバイルビッグ”の重要性。/バム・アデバヨ、ジョエル・エンビード、ニコラ・ヨキッチetc.
2022/11/16時点でのNBA’23シーズンDFG%BEST/WORSTランキングです。(※)
※:DFG%。Defended Field Goal Percentage。
とりあえずざっくり言うと、自分がディフェンスしている相手のFG%。リム近辺での相手FG%だけを指す場合もあります。
DFG%も色々と奥の深いスタッツなので詳細は以下に。
50本以上のシュートをディフェンスした選手対象(50DFGA対象)。※画像クリックで拡大
このDFG%ってスタッツはディフェンス能力を推し量る際に用いられたりしますけど、まぁいつものように要注意なスタッツです。しつこく言っていますが、何かしらを把握したいならばあらゆるスタッツ/指標はコンテキストが大事で、多角的に用いることが求められます。(これもしつこく言っていますが、楽しむだけが目的なら自由に解釈/用いて良いと思います)
上記ランキングを見てみると意外な名前がいくつかありますよね。
まずWORST7位のバム・アデバヨ。アデバヨはAll-Def-2ndに3回も選ばれている選手です。しかし今季は相手に67%以上の確率でシュートを決められています。
「え?アデバヨのディフェンスって実は大したことないの?」と御思いの方。そこがディフェンスが複雑で評価の難しい部分です。
ディフェンス評価は曖昧なものが非常に多いです。ディフェンスに関するスタッツ/指標は増えてきてはいますが、一般的ではないものが殆どで、アイテスト(実際に試合を観て評価する事)を頼りにする比重もオフェンスに比べると多い。なので「あの選手はディフェンス良い」ですとか、「悪いリムプロテクター」ですとか曖昧な評価が多くなりがちです。“エコーチェンバー現象”(※)も多いように感じます。
※:エコーチェンバー現象/効果。ある程度閉じたコミュニティ内で自分と似た意見や自分にとって有利な意見ばかりを集め、特定の意見だけが影響力を大きくしていってしまう事。
NBAコミュニティ内で例えますと、一度「ディフェンスが悪い」という評判がつくとミスばかり注目される事が増え、ディフェンスに関するフラットな意見(スタッツ/指標や優れた観察)は稀で難しいので、「ディフェンスが悪い」という評価を回復するのは非常に困難です。逆のケースもあります。(ファンベース目線での話です、当たり前ですが各チーム関係者やプロの方は別です)
私自身「気をつけなきゃ」と思う反面、一人で楽しむ分には「こまけぇこたぁいーんだよ」と思ったりもします。
逆にオフェンスはスタッツ/指標が豊富で一般的なものも多いので「あの選手はオフェンス良い」なんて曖昧な評価はあまり見ません。PPG、FG%、3P%、APGは一般的なものですし、最近はTS%や距離毎のFG%、レーティング、アドバンスドスタッツにも気軽に触れられる環境がありますからね。
で、アデバヨに話を戻しますと。
実はアデバヨは以前からDFG%は然程良くないです。よく「悪いリムプロテクター」とされるニコラ・ヨキッチとそう変わりありません。’22アデバヨのDFG%64.1%、ヨキッチ64.7%。今季も今のところヨキッチより高い(悪い)数字です。
’23シーズン11月16日時点でのセンター登録選手DFG%Bestランキング(上)とWorstランキング(↓)。※画像クリックで拡大
「んじゃあアデバヨはヨキッチよりも悪いリムプロテクターなのか?」と言えば・・・・・違います!・・・・・・とも言い切れないのがディフェンスの複雑な部分なのです。
はい。「アデバヨよりヨキッチの方がディフェンス良いとかアホか」と思いますよね。私も他人から同じ意見を聞いたら似たような感想を持つでしょう。特に今季今のところのヨキッチはヘルプでの省エネディフェンスが目立ちます。
しかしヨキッチは相変わらずセンターとしては異例なクイック/アクティブハンドを持っています。以前記事にしたので、ここで詳しくは述べませんが、相手にターンオーバーをさせたり、相手オフェンススキームを中断させてショットクロックを浪費させるのは非常に得意です。
他にもポジショニングの上手さ等長所はありますし、改善をしてきている部分も多いです。
ただヨキッチのディフェンスでの短所の部分はチームディフェンスやプレイオフで特に重要になる部分なので、どうしても「エリートディフェンダー」とは呼びづらいです(私は)。
で、再びアデバヨに話を戻します。
アデバヨは言わばヨキッチと逆です。苦手な部分が大きな問題にはなりづらく、得意な部分がチームディフェンスのニーズに合った重要な部分なのです。
アデバヨが苦手とするのは、サイズ/重量がある相手のバックダウンやパワープレイです。ウィングスパンはありますがアデバヨの身長は206cmしかなく細身。なのでDFG%が高くなってしまいがちです。
しかし現在のNBAでそれを得意/頻繁に行う選手は少ない。’22アデバヨのDFG%は64.1%と高い数字ですが、1試合平均で2.3本しか決められていません。
’22センターの1試合平均DFGMワーストランキング。
アデバヨはセンター/ビッグマンとしては小柄ですが、相手ビッグマンはどうせ小さい選手を狙うなら“ミスマッチ”を作るなりして、もっと小さい選手/ガードを狙います。アデバヨの苦手な部分が標的/問題になる事は少ないです。
そしてアデバヨの長所の部分。アデバヨがリーグ屈指の「モバイルビッグ」(スイッチにも対応可能な機敏に動けるビッグマン)である事。これが非常に大きいのです。
上記DFGMワーストランキングの1位ヨキッチ(とエンビード)。ヨキッチを「悪いディフェンダー」とは思いませんが狙われやすい弱点を持っています。
エリートハンドラー/スピードのミスマッチに弱いのです。(エンビードも’21途中の離脱以降この傾向が少し見てとれます、要所では卓越した動きを見せるので、負荷管理してる面もあると思われます)
高さにしろスピードにしろミスマッチを作り、そこを攻めるのはバスケにおいてセオリーです。ハーフコートでの攻防が増えるプレイオフでは尚更です。
そのミスマッチの心配がアデバヨにはない(少ない)。これは非常に大きな長所。ルディ・ゴベアや現在DPOY候補に挙がるイビツァ・ズバッツやブルック・ロペスですらエリートハンドラー/ミスマッチに苦労してきています。(プレイオフでのトレイ・ヤングやルカ・ドンチッチらに)
3ガードやスモールラインナップが増えてきている原因の1つでもあります。
さらに最近はセンター/ビッグマンでもフェイスアップゲーム/ガードやウィングと同じ様なプレイを得意とする選手が増えています。アデバヨの高さと機敏さと“しなやかさ”を兼ね備えたディフェンスは、それを防ぐのに最適と言えます。それこそ昨季’22プレイオフでのエンビード対アデバヨのマッチアップが良い例です。(’22プレイオフ、エンビードは怪我を抱えていましたが、それを考慮してもアデバヨのディフェンスは見事でした)
アデバヨとエンビードの今までの対戦成績。(必ずしもマッチアップしていた時の数字ではないので、ちょっとした雑学程度に捉えて頂ければ)
機敏に動けるという事は、相手にオープンスペースを与えづらく、ヘルプにも間に合いやすくなります。昨季プレイオフでのディナイもお見事でした。
雑な総括。「アデバヨはやっぱりめっちゃ優秀なディフェンダー」
ちょっと突っ込んだ総括。「優秀とされるディフェンダーにだって苦手な部分は当然あるし、逆も然り。悪いとされるディフェンダーの良い部分にも注目してみると面白いかも」
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そして2022年11月14日。私になんやかんや言われたエンビードは59得点7blkのモンスタースタッツを残し、ヨキッチは27分出場でFG4/4,8pts6reb14ast3stl+29とかいう変態スタッツを残すのであった。タイミング良いんだか悪いんだか。
二人が仲良さげにしてるの好き。
勿論エンビードだけでも好き。
今回はこの辺で。ではまた。
追記;ヨキッチがセーフティプロトコル入りで明日のニックス戦欠場。