NBA’23、TS%ランキング。シュート効率を手っ取り早く知るのに有用な“TS%”「トゥルーシューティングパーセンテージ」の便利な部分と留意点。/ステフィン・カリー、カイリー・アービング、ニコラ・ヨキッチetc.

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NBA’23、TS%ランキング。シュート効率を手っ取り早く知るのに有用な“TS%”「トゥルーシューティングパーセンテージ」の便利な部分と留意点。/ステフィン・カリー、カイリー・アービング、ニコラ・ヨキッチetc.

当ブログでは数多くのスタッツ/指標を取り上げています。

所謂「アドバンスドスタッツ」の中で比較的ポピュラーで、当ブログで取り上げる際も、特に注釈なく記載しているTS%略さずに書くとTrue Shooting Percentageトゥルー・シューティング・パーセンテージ。

今更な気がしますが、ちょっとした備忘録代わりにTS%について軽く語ってみようと思います。

TS%は主に「シュート効率」を計る際に用いられます。FG%/3P%/FT%を並べるよりも1つで済む分色々と手っ取り早いです。正直「TS%はシュート効率を表している」とだけ知っていればそれで充分だと思います。

以下は突っ込んだ見方もしてみたい方向けです。

TS%の計算式は

Points/ [2*(Field Goals Attempted+0.44*Free Throws Attempted)]

となります。

上記計算式を少し噛み砕いて説明すると、「2P・3P・FTすべて含めたシュート1本あたりでの得点効率」です。

「いや、FG%と3P%とFT%見れば良いじゃん。別に必要なくない?」と御思いの方。

FG%/3P%/FT%は有用なスタッツですが思わぬ落とし穴・留意すべき点があります。特に複数選手を比較する際は注意が必要です。

昨季’22のステフィン・カリーとカイリー・アービングで説明しましょう。

ステフの’22レギュラーシーズンのFG%は43.7%、3P%は38.0%、FT%は92.3%でした。
カイリーのFG%は46.9%、3P%は41.8%、FT%は91.5%。

二人の昨季’22トラディショナルスタッツ一覧。※画像クリックで拡大

FT%はステフの方が僅かに高いですが、FG%と3P%はカイリーが3%近くも高い。FG%/3P%/FT%だけを見た印象ではカイリーの方が「シュート効率」が良いように見えます。

しかし、注目してもらいたいのが3PA(1試合平均3P試投数)。

カイリーの8.2に対し、ステフは11.2もの3Pを放っています。ステフの方がFGA中の3PA割合(3PAr)が非常に高いんです。

ステフの3PAr.613に対し、カイリーは.388。わかりやすく言うとステフはシュートの内約6割が3P、カイリーは約4割。

「シュート効率の良さ」を別の言い方にすると、「シュート1本あたりで、より多くの得点をあげる事」。
ステフはシュートを入れる確率(FG%、3P%)はカイリーよりも低いですが、打つシュートの過半数が3P、つまり2Pの1.5倍の得点のシュートなので、結果的にシュート効率・TS%はステフ60.1%カイリー59.2%とステフの方が高くなっているわけです。

もっと極端な例を挙げると、今季’23ホーネッツのニック・リチャーズ。2023/4/2時点でFG%は62.4%、3P%100%、FT%は74.3%。ニコラ・ヨキッチに3P%スキルを更に上乗せしたかのような数字。

今季’23ヨキッチとニック・リチャーズのトラディショナルスタッツ一覧。2023/4/1時点。※画像クリックで拡大

ただ、ニック・リチャーズは今季1本しか3Pを打っておらず、その1本が決まった為100%なだけであって、ヨキッチほど3PAもFTAも多くないので、TS%ではヨキッチ70.4%とニック・リチャーズ66.9%でヨキッチが大差をつけています。(ヨキッチがおかしいだけで66.9%も超優秀な数字です)

そんなわけで、TS%は手っ取り早く「シュート効率」を把握するのに便利なスタッツなんですが、勿論万能じゃありません。留意すべき点があります。

もう一度計算式を見てみましょう。

Points/ [2*(Field Goals Attempted+0.44*Free Throws Attempted)]

上記計算式をまた別の言い方にすると、「シュートを打った総回数に対する総得点量」になります。

本項で注目したいのは0.44*Free Throws Attemptedの部分。

フリースローは1本につき1点なので、通常のFGの2分の1、つまり0.5の得点量。けど計算式上では0.5ではなく0.44という係数が用いられています。

何故かというと、3PAでもらった3本のフリースローとand1も考慮に入れてるからです。一度のシュートの試みに対して3つFTAがもらえる事や追加でもう一つFTAもらえる事を考慮して0.44になってるんです。これを0.5にしちゃうと、3PAへのファウルをもらう選手やand1を決めた選手の効率が実際よりも低く見えちゃうんです。

で、この0.44がどうやって算出された数字かというと、「過去の膨大なサンプルを基に調べた結果、0.44にすれば大体の選手の1シーズンでの実測値に近くなります」って数字です。わかりづらいと思いますけど、「大方の選手の1シーズンで3Pファウルやand1をもらう割合」を調べた結果が0.44って数字。

追記:少し正確に言うと、「0.44は全FT中ポゼッションが終わるFT割合の推定値」です。余計にわかりづらくなるだけだと思うので、余程興味のある方以外は忘れて良いです。

1シーズンって部分を太字にしたのは、まさにそこが留意点だからです。

TS%の0.44って係数は1シーズン・ある程度長いスパンを前提とした係数。つまり1試合や短いスパンのシュート効率を計るための係数ではないんです。

例を挙げますと、1試合で2PのFG5/5のみで10得点上げたA選手がいたとしましょう。A選手のTS%は100%になります。

B選手も同じ試合で2Pのシュートを5回試みて全てファウルをもらい、10本のFTを得て、その全てを決めてFT10/10の10得点。結果的に5度シュートを試みて10得点したのはA選手と同じです。しかし、この試合でのB選手のTS%は113.64%とA選手よりも高くなります。同じシュート回数で同じ得点をしたにもかかわらず。

TS%の0.44は長いスパンを前提にした係数で、3Pファウルやand1を考慮にいれた数字、言うなれば2Pシュートでもらったフリースローを過大評価してしまうんです。

つまり、TS%は1試合や短いスパンでのシュート効率を求めるのには向いていない・・・・・・とまでは言えませんが注意が必要になります。and1も3Pへのファウルをもらわずにフリースローを多く決めてる場合は、実際のシュート効率よりもTS%が高く出ちゃう事があります。逆にand1や3Pフリースローもらいまくりな場合は低く出ます。

ただ、上記留意点を鑑みてもTS%は超便利なスタッツです。1試合・短いスパンで使うのも、FG%/3P%/FT%を並べて「シュート効率」を計るよりは誤解が少ないと個人的に思います。
余程極端でなければ誤差の範囲内ですから、私みたいにメンドクサイ人間でなければ忘れて良いくらいの留意点です。

それよりも他に、もっと留意しておくべき点と面白い部分がTS%にはあります。それは・・・・

・・・・・

少し長くなったので続きはまた次回に(多分明日)。今回はこの辺で。ではまた。

追記:続き書きました↓。

余談。

読み返してみて、めっちゃわかりづらいのは重々承知なんですけども、「こう書く方がわかりやすいのか」「いや、こっちの方が」を繰り返すうちにゲシュタルト崩壊な気分になったので妥協しました。ごめんなさい。

カイリーも、なんかケチつけたみたいでごめんなさい。ついでにチャールズ・バークレーがカイリーを「ハーフマン・ハーフ・ア・シーズン」って呼んだ時に大笑いしちゃった事もごめんなさい。(昨季カイリーがシーズンの半分近くを欠場してる時。ビンス・カーターの「ハーフマン・ハーフアメージング」をもじったもの。)

おまけ。

今季’23TS%ランキング。PPG/RPG/APG/FG%/3P%/FT%を併記。2023/4/8時点。※画像クリックで拡大

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