歴代オフェンシブレーティングTOP20ランキング。現在のルカ・ドンチッチとダントーニ指揮下ジェームズ・ハーデン、似て非なる二人の天井はどこにあるのかetc.【ヘリオセントリックについての私見】
2022/11/03に「マブスはヘリオセントリック(※)で突っ走るのか」云々という記事を書きました↓。
※:直訳すると地動説・太陽中心説。つまり一人の圧倒的なball dominantめっちゃボールを持つ中心選手(太陽)の周りに、それを補完する選手(ロールプレイヤーが多い)を並べるようなチーム構造・オフェンスシステムの事。Heliocentrism/ヘリオセントリズムとも。
2019年くらいからよく使われるようになった言葉ですが、NBAにおける起源も定義も割と曖昧。恐らく1番有名な例はジェームズ・ハーデンのいたマイク・ダントーニHC指揮下ヒューストン・ロケッツ(’17-’20シーズン)。
ハーデンのいたロケッツや今のマーベリックスを見ればわかるように、太陽役を担える選手さえいれば非常に強力ですが、1人がめっちゃボールを持つため他のスター選手は獲得しづらかったり、獲得できても不満を持たれやすかったり、有効活用しづらかったりします。
上記は超大雑把な説明で、実際は色々と奥深い言葉で解釈/考察も様々。「ヘリオセントリックで優勝できるのか?」をテーマに記事が作られてたり議論が沸いたりで面白いです。
記事を書いた後、マーベリックスはパオロ・バンケロのいないオーランド・マジック、ブラッドリー・ビール&クリスタプス・ポルジンギスのいないワシントン・ウィザーズに敗戦。(本日2022/11/13の試合結果は内緒)
上記補足文にあるように、私が覗く一部コミュニティ内で「ヘリオセントリックで優勝できるのか?」の議論が少し再燃しております。
当ブログでも便乗して、ヘリオセントリックについて少し語ってみましょう。
ジェームズ・ハーデンのいたマイク・ダントーニHC指揮下のヒューストン・ロケッツはヘリオセントリックの代名詞的なチームです。
ロケッツはハーデンのIso/2メンゲーム(※)に多くを託しました。一人の選手にIso/2メンゲームのハンドラーを多くやらせる事がヘリオセントリックの特徴の一つです。
※:Iso=アイソレーション。一人の選手にボールを託し、他の4人は距離をとってスペースを与えて1on1をさせる戦術。
※:2メンゲーム。ピック&ロールに代表される2人の選手を用いたオフェンス。割と定義が曖昧で人によっても違う。ポストフィードからのカッティングやドリブルハンドオフ等を2メンゲームに含む方もいれば、ピック&ロールと同義で2メンゲームという単語を使う方もいます。
ハーデンは’17-’20シーズンのマイク・ダントーニHC指揮下ヒューストン・ロケッツでUSG%36.8%、AST%43.2%と非常に高い数値を記録。
ハーデンのIsoの回数は’17リーグ1位で552回(2位はラスで518回)、’18リーグ1位719回(2位はレブロンで521回)、’19リーグ1位1280回(2位はラスで353回)、’20リーグ1位956回(2位はラスで424回)。
ピック&ロールボールハンドラーの回数は’17リーグ3位で944回(1位はケンバとラスで967回)、’18リーグ5位で734回(1位はリラードで867回)、’19リーグ14位581回(1位はケンバで971回)、’20リーグ29位381回(1位はトレイ・ヤングで940回)。
その間ロケッツのOffRtgは’17リーグ2位、’18リーグ1位、’19リーグ2位、’20リーグ6位と高い攻撃力を発揮しました。
・・・・・・’19ハーデンIso1280回はアンブレイカブルレコードではなかろうか。
ハーデンの主だったトラディショナルスタッツ↓。
とにかくハーデンを中心としたヘリオセントリックは非常に強力でした。
ところが当時のロケッツは捉え方の困る“ややこしい”チームでもあります。「ロケッツのヘリオセントリックは成功したのか、失敗したのか」の判断が非常に難しいのです。
上記成績は全てレギュラーシーズンのもの。その負担の多さ/消耗からか、ハーデンはプレイオフになると調子を落としてしまいます。
’17~’20レギュラーシーズンでのスタッツ。
’17~’20プレイオフスタッツでのスタッツ。
これだけ見れば「ヘリオセントリックは非常に強力だけど中心選手の消耗が激しく、中心選手の出来不出来がそのままチームの勝敗に繋がるシステム」といった印象を受けます。
ところがどっこい、ロケッツはステフ&KD&クレイ&ドレイモンドのいた’18ウォリアーズを2勝3敗まで追い詰めてもいるのです。「クリス・ポールの怪我さえ・・・」「3P27本連続失敗さえ・・・・」なんて声もあります。(勿論それも含めて勝負ですから、言っても仕方のない仮定です)
上記の理由やここでは書ききれない様々な理由があって「ロケッツのヘリオセントリックは成功したのか、失敗したのか」「ヘリオセントリックで優勝できるのか」の判断は非常に難しく、だからこそ面白いのです。
「史上屈指のスコアラー&パサーであるハーデンとクリス・ポールを消耗させ過ぎずに有効活用するシステムが、ヘリオセントリック以外にもっと良いシステムがあったのではないか?」
「いやいや、あのウォリアーズをあそこまで追い詰めたのだから、例年なら優勝できてたはず」
「いーや、ウォリアーズ相手でなくともハーデンやクリス・ポール、ロケッツがガス欠/怪我するのはヘリオセントリックである以上必然」等々と議論が重ねられるわけです。(上記内容はよく見かける意見を適当に意訳したものです、実際はもっと複雑かつ様々な意見が飛び交います)
勿論“答え”なんて出やしません。勝敗はシステムだけで決定されるわけではなく、星の数ほどの要因が絡み合って決定される事でしょうしね。
ただ、私にとって一つの“答え”というかハッキリしている事が一つあります。
ヘリオセントリックは面白いです。
ボールホグ(ボールをめっちゃ持つ選手)やシュートを多く打つ選手はセルフィッシュと見なされ、バスケにおいて「良くない」と見なされる事が多いです。
しかしヘリオセントリックはその「良くない」とされている事を前提としたシステムです。ハーデンやドンチッチの高いスコアリングスキル、そこから繰り出されるアシストスキルに多くを託し、周りにキャッチ&シュート/ロブスレット/ディフェンスの得意な選手を並べる。(クリス・ポールやジェイレン・ブランソン、スペンサー・ディンウィディーのようなセカンダリーハンドラーも並べたりします)
ハーデンやドンチッチがオフェンスで多くの負担を担うから≒ボールを持ち過ぎるから、周りの選手は自分の得意分野に注力出来るのではないでしょうか。実際の試合では必ずしもそう簡単に行きませんけど、少なくともロスター編成/システムの意図では。
自らの意志でロケッツを去り、エンビードと共にいるハーデンは今後ヘリオセントリックの中心役を担う事はないでしょう。
勝手ながら私はドンチッチにそのロマンの続きを見せてほしいのです。「ヘリオセントリックでは優勝できない」「一人の選手がボールを持ち過ぎるのは良くない」という通説をブチ破ったら面白いと思うのです。勿論怪我をすることなく、という前提付きです。
正確にはドンチッチ/マーベリックスとハーデン/ロケッツのヘリオセントリックには違いがあります。
ドンチッチのスタッツ一覧↓。
ドンチッチのUSG%が初めて35%を超えた’20マブスのOffRtgはリーグ1位で当時歴代1位の数字でした。(今では歴代9位)
歴代オフェンシブレーティングTOP20ランキング。
しかし、相手チームも慣れ始めたのか’21マブスのOffRtgはリーグ8位、’22は14位にまで下がります。ドンチッチ自身のスタッツもボリューム/効率共にハーデンほどの高さを残してはいません。
ただドンチッチには“若さと時間”があります。
ドンチッチ以外のコアメンバーには30歳前後の選手が多いですが、ちょうど選手としての寿命に年齢的に陰りが出始める頃に契約も切れる選手が多いです。ベルターンスやティム・ハーダウェイJrは現状サラリーに見合った活躍をしているとは言えません。しかし今後復調しないとも限りませんし、その契約は’25までで、その時ドンチッチはまだ25歳です。
マブスのDefRtgは’20リーグ18位、’21リーグ21位でした。そこから昨季’22はリーグ7位にまで改善させています。
チームとしてもドンチッチ個人としても改善の傾向と余地は充分に見てとれます。
ドンチッチがもしこのままダントーニ・ロケッツ時代ハーデンのようなハイボリュームスコアリングと高効率を手にして、マブスがもしこのままディフェンスを向上させ続けていくとしたら・・・・・
・・・・それはもう・・・・・なんというか・・・・・
・・・・・・
です。
今後ジェイソン・キッドHC、ドンチッチ、マーク・キューバンらがマブスをどうしていくかは不透明。そもそも一部のファンが「ヘリオセントリック」呼ばわりしているだけで、ドンチッチやマブスは「ヘリオセントリック」というシステムをなぞっているつもりもないでしょう。
今まで通り「ドンチッチと共に生き、共に死ぬ」というシステム/ヘリオセントリックが継続されていくなら面白い。
そうではない一風変わった新しいヘリオセントリックが見られるのなら、それもまた面白い。
ヘリオセントリックを捨てて、ドンチッチに多くのキャッチ&シュートや攻守オフボールでの貢献を求める事もあるかもしれません。いずれにせよ、面白い。
まだまだ複雑で書き足りない要素と魅力がヘリオセントリック/ダントーニ/ハーデン/ドンチッチ/マブス/ロケッツにはありますが
今回はこの辺で。ではまた。
余談。
マジック対マーベリックス戦にて、ドンチッチに対するディフェンスで称賛を集めたチュマ・オケケ。
「ん?チュマ・オキキじゃなくて?というかどっち表記でも良いんじゃない?」と御思いの方。その通りですけど、あえて言いたい。
いーえ、オケケなんです。
どういう事かと言いますと。
米メディア/マジック実況解説デビッド・スティールとジェフ・ターナーも昨季までは Chuma OkekeのOkekeを“O -key key”オキキと発音していました。
しかしチュマのお父さんはナイジェリア出身で、よりナイジェリアでの発音に近いのは“O-Kay-Kay”オケケだという事が、オフにチュマ・オケケ本人からメディアへと知らされました。
それをマジックの実況解説や米メディアの皆が尊重して、今季からハッキリとチュマ・オケケと発音するようになったのです。
今季開幕したての頃は実況解説に“間違えないよう気を付けて発音している”感がありありで何とも微笑ましかったです。
・・・・・・
・・・・・一部米実況解説者が八村をハチミュラって発音するの・・・・嫌とかではないんですけど・・・
・・・・・なんかこう・・・・・可愛すぎてなんか・・・・