【NBA】バスケにおいて重要で近年数値化も可能になったショットクオリティとショットメイキングの概念。それら指標のランキングやオンオフRtgから窺う良いオフェンスとの関係性。/ヨキッチ、ドンチッチ、ケビン・デュラント、ナゲッツ、マーベリックス、サンズ

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【NBA】バスケにおいて重要で近年数値化も可能になったショットクオリティとショットメイキングの概念。それら指標のランキングやオンオフRtgから窺う良いオフェンスとの関係性。

NBAにおいてスポーツアナリティクスや効率化の概念が浸透していくと共に“Shot Quality”「ショットクオリティ」という言葉を耳にする事も増えました。

「ショットクオリティ」直訳すると「シュートの品質」。もう少し噛み砕いて言うと「シュートの得点期待値」となるでしょうか。

1997年、NBAではより詳細なデータが得られるようになり、記録として残されるようになりました。

NBA.comなりBBRで調べてみるとわかりやすいですが、1997シーズンを境に得られるデータの種類は大幅に変わります。各アリーナにデータ追跡用の高性能カメラが設置されるようになった2014シーズンも一大転機です。

それら詳細なデータから派生していく形で、2023/9/7現在もスタッツ・指標の種類は加速度的に増えています。

「ショットクオリティ」「得点期待値の高いシュートを打とう」「より簡単なシュートを打つ事を目指そう」といった概念・アプローチは1997年以前にも当然存在しましたが、近年はショットクオリティ」をスタッツ・数値化して評価する事も可能となりました(完璧ではないにしろ)。

データサイトSynergy Sportsが「ショットクオリティ」を数値化する際に主に採用している測定基準。

Synergy Sports以外にも「ショットクオリティ」にまつわる指標を公開しているサイトはありますし、指標としてでない「ショットクオリティ」という単語もよく見聞きします。

それ程興味の対象となりやすく、チームの勝利のためには重要な概念です。

「ショットクオリティ」の高いシュートを打つことは超大事、得点期待値の高いプレイをする事は超重要、間違いありません。

つまり「ショットクオリティ」の高い選手を集めまくれば最強チームの出来上がり!

と言いたいところですが、

事はそう単純じゃあありません。

BBall Indexのショットクオリティ指標TOP10。以下2023シーズン1000分以上出場選手対象。

所謂「ロブスレット」(ロブをよくキャッチする選手)や「リムフィニッシャー」、リム近辺ばかりでシュートを打つ選手が並んでいます。

続いて3Pのみにフォーカスしたショットクオリティ指標でのTOP10を見てみましょう。

「3Pを決めるスキルが低いが故にディフェンスに警戒されずオープン3Pをよく打つ」→「3Pのショットクオリティが高くなる」といった選手も見受けられます。

基本的にショットクオリティ指標は「ショットメイキング(シュートを入れる能力)」は考慮されません。別物です。詳しい説明はこちら

ショットメイキング指標TOP10にショットクオリティ指標を併記したもの。

ショットメイキング指標の高い選手、ドンチッチやステフィンカリーらチームのメインオプションたちは概してショットクオリティ指標はマイナス・低くなっています。(ヨキッチ以外は)

何故か。

チーム全体の「ショットクオリティ」を良くしようと思ったら、「ショットクオリティ」の悪いシュートを決める事も必要になってくるからです。ディフェンスが厳しくなるプレイオフでは特に。

多少のディフェンスをものともせずタフショットを決める選手がいる事でディフェンスに偏りができて、他所にオープンや隙が生まれ、チームメイトのショットクオリティが高まる。全てがそうとは限りませんが、そういったケースは非常に多いです。

ところが、これまた複雑な事に、そのショットクオリティとショットメイキングのバランスというのは非常に難しい。いくらメインオプションでも、優秀なショットメイキング能力を持っていたとしても、毎回毎回タフショットでは困りものです。

メインオプション以外、ロールプレイヤーでも3Pシューターには同じ事が言えます。3Pシューターは文字通り3Pシュートを打つことが仕事です。極一部を除き、基本的に3Pシュートを打つには多大な労力を割きます。メインオプションがディフェンスを引き寄せたり、スクリーナーがスクリーンをセットしてあげたり、パサーがディフェンスをかいくぐってパスを出してあげたりで、ショットクロックも消費します。

なので、3Pシューターがしょっちゅう「ちょっとディフェンス近いし、ショットクオリティ悪いから打つの無理だわ」と言おうもんなら

スクリーナーやパサーやメインオプション一同。

となります。ケンカしてる間にショットクロックバイオレーションです。

チーム全体の良いオフェンス・良いショットクオリティのためにメインオプションや3Pシューター他スコアラーには「どの程度のタフショットがどの程度の頻度まで許されるのか?」、メインオプションや3Pシューター他スコアラーにとって「理想的なショットクオリティとはどういったものなのか?」

当然それは選手・チーム次第でケースバイケースです。自身のシュート以外のスキルやチームメイトのスキルも関係してきます。

ニコラ・ヨキッチはとんでもないタフショットメイカーでショットメイキングが優れていますが、オフボールの動き・イージーなショットクリエイトにも長けていて、パサーやスクリーナーとしても味方のショットクオリティ向上に貢献できるので、タフショットを打つ頻度は低い≒ショットクオリティも低くありません(他メインオプションと比べると)。

ヨキッチの2023シーズン一部指標。

相手を読み適切なプレイタイプを選んで超効率を記録する効率お化け。効率トトロ。

ケビン・デュラントはリーグ史上TOPと言って差し支えないほどの「高さと精度を兼ね備えたジャンパー」を持っていますから、ディフェンスがいくら寄っていてもあまり関係なく決めてしまいます(全く関係ないわけではない)。ショットクオリティ指標はリーグ屈指の低さですが(デマー・デローザンやブランドン・イングラムなどミッドレンジジャンパーを多投する選手は低くなる傾向にあります)、それでも超効率良く決めちゃうんですから、これもまた関係ないです。

KDの2023トゥルーシューティングチャート。

トップを除き、あらゆる位置で超効率を記録したデュランチュラ。
近年は怪我による欠場が増えてきましたが、来季は是非とも長くそのプレイを見せて下され。ついでにSNS芸も宜しくお願い致します。

ルカ・ドンチッチはほぼ全てのシュートがタフショット、ドリブルを多くついた後のシュートやステップバック3Pも全く厭わず、ボールを持った際の生産性は屈指も屈指、自らのショットクオリティを犠牲にしてチームメイトのショットクオリティを高めディフェンスに注力させやすくしています。2023シーズンは生産性はそのままに自身のシュート効率も向上させました。

スコアリングPGはドリブル後のシュートが多くなる傾向にありますが、それにしても多いです。というかキャッチ&シュートが少ないです。そして不思議な事に0ドリブルでのシュートより7回以上ドリブルを突いた後の方がEFG%が高いっていう変態効率。
オンボール頻度や、そこからの生産量は現NBAでトップクラス。というか恐らくトップです。

上記ヨキッチ、KD、ドンチッチの三人はプレイスタイルや好むシュートも違いますがショットメイキングが超エリートなのは同じ。

そしてもう一つ、重要な共通点。

三人ともコートに立った時はチームのオフェンス効率を大幅に向上させています。

三人のオンコートOffRtg(コートにいる時のチームOffRtg)とオン/オフOffRtg(コートにいる時といない時のチームOffRtgの差)。引用元:Cleaning The Glass

ヨキッチ。

pts/poss列上段の数字がオンコートOffRtg。pts/poss列下段がオン/オフOffRtgです。上記画像を例にして言うと、ナゲッツはヨキッチがコートにいる時100ポゼッションあたり125.4点とり、ナゲッツはヨキッチがコートにいるといないとでは100ポゼッションあたり18.7点分もオフェンス効率に違いがある事を意味しています。

KD。

サンズでの数字はまだ269ポゼッションのみなので省略。まだ発展途上でしょうしね(オン/オフ+1.0なので既に悪くないです)

ドンチッチ。

ドンチッチは2022シーズンからオン/オフOffRtgも3.3→7.7へと向上させました。

とりあえず以上。

他にもステフィン・カリーやルーク・ケナード等々、そのショットクオリティやショットメイキングからチーム全体のショットクオリティや他スキルとの関係性を妄想できる面白い選手は沢山いますけど、それはまた別の機会に。

「ショットクオリティ」について書くつもりがエラく脱線した気もしますが、「ショットクオリティ」はそれだけ多くの関係性を持つ「バスケの根っこ」とも言える概念って事で

今回はこの辺で。ではまた。

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