「世界を手中に収めるためであっても、魂は手放すな」NBA随一の“オシャレさん”であり、“偉大な架け橋”でもあり続ける名選手/名解説。
先日のネイスミス・メモリアル・バスケットボール殿堂入り式典にて、現在ニューヨーク・ニックスの解説を務めるウォルト “クライド” フレイジャー(以下クライド)が、極めて優れたライターやメディアパーソンに贈られるカート・ゴウディ・メディア賞を受賞しました。
クライドは70年代ニューヨーク・ニックスを中心に活躍しNBA50/75周年記念チームにも選ばれている往年の名選手です。
クライドの活躍は現在進行形で続いています。
ニューヨーク・ニックス解説者として20年間実況のマイク・ブリーン(ESPNの全米放送、“BANG”の実況でもお馴染み)とタッグを組み、ニューヨーカーのみならず多くのNBAファンやNBA関係者から尊敬を集めています。
クライドの解説はゆったりとした声音で私のようなリスニング弱者にも聞きとりやすく、相手チーム選手へのリスペクトも惜しまず適度に身内びいきで適度に分析もしてくれて、聞いていて不快感がないです。
前述の通り、クライドはまごう事なき名選手で優勝も2度経験しています。
しかしそれに胡坐をかくことはありません。30年以上前にラジオ解説者として解説の仕事をスタートした時、TVで無音の試合を観戦し声を当て、一人でバーに行き大音量のバー内で見知らぬ人に話しかけて発声の練習をするなど解説者としての努力も惜しみませんでした。
その姿勢はクライドの母からもたらされています。
Don’t gain the world and lose your soul.
世界を手に入れるためであっても、魂は失わないで。
ボブ・マーリーの名言として知られるこの言葉を、クライドの母はクライドが有名になった後も家に帰ってくる度、挨拶をするように繰り返し彼に言い続けました。
ニックスはビッグマーケットでありながら、この20年間プレイオフに進んだのは5度。カンファレンスセミファイナルを突破できていません。
“楽しみ”はいつだってありますが、苦難とも思える道を歩んでいます。
As a 72 year old I’ve been watching and listening to Clyde since his rookie year. Along with his “sagacity” and “perseverance personified” he brings a joy for the game, an accessible personality, an ability to laugh at himself, and a modesty that belies his extraordinary wit and wisdom. I’m not sure I would have followed the Knicks through all of the disastrous years if it wasn’t for Clyde and Breen. They turn the games into a community event.
72歳の私はクライドの新人時代から彼を見続けています。彼の“優れた洞察力”と“擬人化された忍耐力”は試合に喜びをもたらします。親しみやすい人間性、自分自身を笑い飛ばす器量。時として彼の“謙虚さ”は彼の機知や賢さを隠します。しかし、クライドとブリーンがいなかったら私はニックスの悲惨な年月を追い続けていられたかわかりません。彼らは試合をコミュニティイベントへと変えるのです。
ーThe Athletic記事のコメント欄より引用
NBAの試合を形作るのは選手やファンだけでなく、クライドやブリーンのような“架け橋”も沢山存在するのだと、改めて実感し感謝する今回の受賞でした。
バスケットボール、ユニフォーム、ハット、コート、ジャケット、マイク。全てが似合っているクライドはNBA史上最高のオシャレGOATかもしれませんね。