【NBA2023】本当にスポーツに失敗はないの?マイケル・ジョーダンとヤニスとブーデンホルツァーHCの発言とジミー・バトラーのショットチャートから考えるアレコレ。/バックスの今度その2。/バックス、マイアミ・ヒート、ブルック・ロペス、シカゴ・ブルズ

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【NBA2023】本当にスポーツに失敗はないの?マイケル・ジョーダンとヤニスとブーデンホルツァーHCの発言とジミー・バトラーのショットチャートから考えるアレコレ。/バックスの今度その2。/バックス、マイアミ・ヒート、ブルック・ロペス、シカゴ・ブルズ

本記事は先日の記事↓の続きです。

上記記事を超雑にまとめますと、

1.バックスのコアメンバーは今のままで良いのか?

無制限FAとなるブルック・ロペスとの再契約は優先事項。不安定なミドルトンはプレイヤーオプション行使が濃厚でしょうし、近年プレイオフで低調なドリュー・ホリデーはオフェンス面では不調でもヤニスやロペスのヘルプ・アンカーディフェンスを活かすためにもやっぱり必要です。
どうしてもトレードなりコアメンバーに変更を加えたくとも、上位互換が手に入るチャンスなんて早々ないしバックスで活躍する保証もないです。2021後レイカーズの二の舞になりかねないので、焦ってリスクを取るよりは来季トレードデッドラインまで待っても遅くはないんじゃないかしら?って感じです。

2.ヤニス・アデトクンボはまだ現役ベストプレイヤーと言えるのか/候補は誰になるのか

ヒートに負けたからって理由だけでなく今季通して見た結果、ヤニスを「問答無用の現役ベストプレイヤー」とは呼びづらくなりました。ヤニスは依然超エリートな「現役ベストプレイヤー候補」だと思いますが、他にもエンビード、ヨキッチ、レブロン、ステフ、KD、テイタム、ブッカー、バトラーと候補者多数で今季プレイオフの結果・見方次第で如何様にも。来季になればルカ・ドンチッチもいますし、新しく名を揚げる選手もいるでしょうし、これはこれで楽しみですね。

以上が前回記事の雑なまとめ。(脱線の多い記事でまとめるのも一苦労でした)

で、続き

3.ブーデンホルツァーHCのタイムアウトの不使用、アジャストメントの欠如はなぜ起こったのか

とりあえずブーデンホルツァーHC自身の弁の聞いてみようと思って試合後記者会見を見ましたけど、憔悴しきった表情と喋り方でいたたまれない事この上なかったです。動画へのリンク

追記:ヒートとのシリーズ中ご家族に不幸があったそうです。謹んでお悔やみ申し上げます。

タイムアウトを温存し続け最後になっても使わなかった事については「使うべきだった」としつつも

「ヤニスがアタックして、クリス(・ミドルトン)がボールを持ったならクリスがアタックする。それが我々の攻め方で、今夜はそれを上手く機能させられなかった」

「ただシュートが入らず、結果がついてこなかった」

「彼ら(ヤニスやミドルトン)を信頼していた」

「4Qやオーバータイムで選手の自信が失われていたとは思わない」

「ジミー・バトラーやマイアミのディフェンスが素晴らしかった」

と、あくまで選手自身の意思決定を重視した旨の回答をしています。(他にも色々答えてくれてますが長いので省略、気になる方は上記リンクへ)

勿論これはメディア向けの回答で、実際はもっと複雑なゲームプラン・スキームを単純化しての回答でしょうから、この会見だけを見て「ブーデンホルツァーHCはアジャストメントに欠けたコーチ」「責任感の薄いコーチ」だなんて言えません。

ただ、試合内容と結果からも「アジャストメントには欠ける」って印象は受けます。優勝した2021年含めプレイオフでのバックスは常に相手に合わせず元のプランを貫き通す、悪く言えば「アジャストメントに欠ける」、良く言えば「横綱相撲」な印象です。

今シリーズで言えば、ジミー・バトラーの活躍やヒートHCエリック・スポールストラに対して、されるがままに見えました。

3Pを打たすのはまぁ良いとしても、明らかにノリノリなプレイオフ・ジミー状態のジミー・バトラーに簡単にボールを持たせる、Isoもやらせてダブルチームにもいかない(タイラー・ヒーロー、ビクター・オラディポ不在でバム・アデバヨもシュートタッチは好調ではなかったのに)、下がりに下がったドロップカバレッジで得意なミドルを打たせる、かといってゴール下を死守していたわけでもなくドライブ・ダイブカットでジミーや他選手にイージーレイアップを沢山決められていました。

第5戦でのヒートのショットチャート。

第5戦でのジミー・バトラーのショットチャート。

「アジャストメントに欠ける」って評価はお決まりの文句で誰にでも簡単に言えますし、本来私はあまり好きじゃないんです。

アジャストメント(調整・対応)ってのは「するかしないか」“do or do not”じゃなくて「どうアジャストするか」“how”が重要で難しいわけで、当初のプランを貫くってのもアジャスト(対応)と言えばアジャストです。

変更を加えるアジャストってのは多数の選択肢(誰が何をして、どう動くか。誰が誰について、どのプレイをさせて、何をさせないか等々)の中から選ばなきゃいけないわけで、全ての選択肢・全てのスキームを完璧にこなせるチームなんてものは存在しません。「アジャストしろ」と言うのは簡単ですけど、練習してない事・不慣れな事をコートの5人全員が上手く連携するのは極めて難しいでしょう。

なので、「目立った変更を加えない」「アジャストしていない」ように見えても、それがそのチームにとっての最善策って事はあると思います。慣れてないスキームをこなそうとして5人がバラバラになって不和を生むよりは、慣れたスキームを質高く連携よくこなす。選手を信頼し当初のプランを貫き通す。これも選択肢の一つでしょう。

そして恐らくはそれが、そう見えるのがブーデンホルツァーHCの好むプラン・スキームで特徴なんでしょう。

で、優勝した2021年以外はそれが上手くいかなかった。

今季は第5戦以外も一貫してヒート、ジミー・バトラーにやりたい事をやらせて向かい合って、結果上手くいきませんでした。

繰り返しますがヒートはタイラー・ヒーローがいなかったんです。そしてジミーは初戦から高効率に35、25、30得点。

第4戦は以下のショットチャートで56得点。右左ゴール下ミドル3Pどっからでも打ってどっからも決めてます。フリースローも15/18。

続く負けたら終わりのエリミネーションゲーム第5戦。ここまで絶好調ジミーの第5戦ショットチャートをもう一度見てみましょう。

FGAは28→33に増加してます。直前の試合でジミーに好き放題やられて負けてるのにもかかわらず。警戒すべきもう一人のスコアラー、タイラー・ヒーローがいないのにもかかわらず。

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一度決めたプラン・スキームは極力変更しない、選手を信じる。
第5戦の第4Q残り6秒ヤニスのパスミス・ターンオーバー未遂。
オーバータイム残り1:43でのヒートのベースラインインバウンズプレーでコディ・ゼラーにワイドオープンダンクを決められ、残り40秒にはマックス・ストゥルースへの痛恨の3Pファウルなど明らかに困惑や混沌が目に見える場面・勝負の瀬戸際でも選手自身の力で立ち直る事を信じる。オフェンスでもディフェンスでも、それがブーデンホルツァーさんのコーチングスタイル。

・・・・・・やっぱりもうちょっと選手へ手を差し伸べて欲しかった気がします。

けど、そういった選手の自主性を促すコーチングスタイルがホークスやバックスを強豪へと変えた大きな要因の一つなんでしょう、きっと。

もし来季もバックスのHCを続けるのなら、そうでなくとも別のチームでHCを務めるのなら、今回の敗退を受けてブーデンホルツァーさんがどう変化するのかにも大注目です。

4.2023バックスのシーズンは失敗だったのか

この質問に対するヤニスの回答が大きな話題となりました。

“There’s no failure in sports. It’s steps to success.”

「スポーツに失敗なんてない、それは成功へのステップ」

フル動画へのリンク

良い言葉です。マイケル・ジョーダンのキャリアを引き合いに出して「ジョーダンの15シーズンのキャリアの内、優勝を逃した9シーズンは失敗だった?バックスは50年間優勝できなかったけど、その50年は失敗だった?違う、ステップだ」とも答えています。

中々含蓄のある答えですね。

けど、詭弁です。優勝を期待された第1シードの中心選手が第8シードに1勝4敗で敗退した後に言うのは詭弁です。前向きになれる良い言葉ですけど、現時点では今回の敗退は大きな失望で失敗です。

ジョーダンが優勝を逃したシーズンが失敗じゃないのはジョーダンの6回の優勝に繋がったからです。ジョーダンの気持ちを代弁は出来ませんが、もしもジョーダン率いるブルズが初優勝後1992年のプレイオフ1回戦で敗退していたとしたら、その時点では「そのシーズンは失敗だ」と私は思います。その時点では次の優勝は何も保証されていないんですから。(奇しくも1992年ブルズは今季バックスと同じくイースト1位でプレイオフ一回戦で8位のヒートと対戦。3勝0敗で勝利)

バックスも同じです。50年間の優勝できなかったシーズンがステップと言えるのは2021年に優勝できたからです。勿論「優勝できない=無駄・失敗」では決してありませんし、優勝できずとも期待を大きく上回って満足のいく結果となる事はザラにあるでしょう。選手がどう思っているかは知りませんが、私はプレイオフに進出すらできなかった今季ユタ・ジャズを失敗だとは思いませんし、2021年以前の50年間バックスの中でもそういうシーズンは沢山あったでしょう。

ただ今季バックスについてはそうは思えません。今は。

厳しく傲慢な言い方ですが、今季バックスの敗退はバックス関係者・ファンに大きな失望を生んだ以上失敗とされるものだと思います。 failureという表現や昨季と同じ質問を繰り返された事がヤニスには受け入れ難いのかもしれませんが、ヤニス自身も結果に満足しておらずガッカリしてる事は間違いないでしょう。少なくともブーデンホルツァーHCはdissapointed「ガッカリ・失望した」という表現は用いています。

負けた後はフラストレーションがあって当たり前です。「今シーズンは失敗だったでしょうか?」という1st roundで敗退した第1シードの選手に対しては至って普通の質問をした記者に語気を強め、質問を質問で返すヤニスの姿は正直見ていて気持ちの良いものではなかったですけど、一番悔しいのはヤニスを始めとしたバックスの選手・コーチ・関係者たちです。

件のマイケル・ジョーダンも

I’ve never lost a game. I just ran out of time.

試合に負けた事は一度もない。時間切れになっただけ。

という究極の詭弁や

1993年マイケル・ジョーダンはワシントン・ブレッツ(現ウィザーズ)2年目のラブラッドフォード・スミスに目の前でキャリアハイ37得点を記録されてジョーダン自身はFG9/27で25得点の絶不調、試合後「ナイスゲーム、マイク」と皮肉を言われます。

ジョーダンは次のブレッツ戦でその試合のスタッツシートを靴下に入れ、ラブラッドフォード・スミスを執拗に攻め47得点を記録。

後にラブラッドフォード・スミスは「ナイスゲーム、マイク」とは言っておらずジョーダンによる捏造と発覚。

と時に相手の失礼な発言をでっち上げてモチベーションへと変えて6回も優勝をしたんですから、詭弁大いに結構です。

つまり、私にとっては今季バックスの結果は失敗と言えるものですけど、それはあくまで現時点での話で、ヤニスのフラストレーションや言い分も同意は出来ずとも十分理解できるし満更悪い事とも思わない、記者の質問も一部の人間にとっては不快に思われても、ただするべき仕事をしただけだと思います。

マイケル・ジョーダンと同じくまた優勝して「ヤニスのあの敗北は必要なステップだった」と皆が納得するようになれば良いですね。

キャリアで9000本以上のシュートを外し、300近くもの試合に負けた。

26ものゲームウィナーを託され外した。

人生において幾度となく失敗してきた。

それこそが私が成功した理由さ。

.今後のバックスが起こすべきアクションは何なのか

1.バックスのコアメンバーは今のままで良いのか?」と被った内容で「起こすべきアクション」というか「起こしてほしいアクション」で単なる私の願望ですけど、まずはブルック・ロペスと再契約です。3Pが打ててヤニスのためのスペーシングに貢献出来て、リムプロテクター・ディフェンシブアンカーとしてヤニスのヘルプディフェンスを活かす、ヤニスの負担を減らす手助けも出来るブルック・ロペスはまさにバックスとヤニスのための存在です。あと婚約したばかりの未来の奥様のための存在。

兎に角、ブルック・ロペスは予想される年15~20Mのプレイヤーオプション含んだ2~3年契約よりも多少高くついたとしても再契約すべきだと思います。

もう一つは「急がないで欲しい」と思います。

ブーデンホルツァーHC、ミドルトン、ホリデーには私から含め厳しい評価が目立ちますけど、レギュラーシーズンでは1位で、プレイオフは初戦から3試合はほぼヤニス不在で本来出来たはずの試合が出来なかった上での今季の結果。

優勝経験のある現行コアメンバーでもう一度挑戦する事は無謀とは思いませんし、少なくとも時間の無駄ではないでしょう。メンバーをガラリと変えて新メンバーとのケミストリ―構築や戦術理解度を浸透させることの方が余程リスクは高いと思います。バックスの様にディフェンスに強みを持つチームは特に。

「大きな変革が必要かどうか」の決定をするのは来季トレードデッドラインでも遅くはないと思います。手を加えるにしてももう一度来季レギュラーシーズンで色々試して、何が必要で何が不必要なのかをより詳細に把握して、誰がトレードマーケットにいるかを確認してからの方が適切なチーム改造に繋がるのではないかと。

ヤニスのフィジカルが直ぐに衰える可能性は100%ないとは言い切れませんがヤニスはまだ28歳ですから切羽詰ってるわけでもなし。1度優勝してるってのはやっぱり選手との再契約でも大きなアドバンテージで、ヤニス始め他優勝メンバーががバックスに愛想を尽かして出ていくって事はないんじゃないかと思います。

なので再契約もトレードも何事も急がない・焦らないのが大事かなと。

焦ってタレントだけ重視してフィット感を無視したトレードをしない。焦って過払いなFA獲得・再契約をして層の厚さを手放さない。焦って交渉を進めて選手の不信感を強めてケミストリー・連携・カルチャーを損なわない。

起こすべきアクション」じゃなくて「起こしてほしいアクション」でもなくて「起こしてほしくないアクション」ばかり書いてますね。

まぁ、兎に角こんな感じです。

以上。2日間・2つの記事に分けてバックスやバックスに関係する事しない事ごちゃ混ぜに語ってみました。

いつもの記事と比べると若干辛辣だったり批判的な内容の多い記事ですけど、毎回毎回ポジティブな事しか書かないのも、それはそれで不誠実な気がしてきちゃうんです。視聴者・読者としての私はポジティブネガティブ酸いも甘いも楽しむタチですし。

そんなわけで、不快に思われた方は申し訳ありません。

明日からはまた試合を見ながらデータサイトをいじくりまわして、とにかく明るい記事を上げると思います。

さしあたって、とにかく明るいコービー・ホワイト。

今回はこの辺で。ではまた。

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