NBA’23各総合指標での選手ランキング。/影響指標“LEBRON”のNBA’23最新版が公開。/総合指標から考える「アドバンスドスタッツとの接し方」。/ニコラ・ヨキッチ、テイタム、ステフ、ドンチッチetc.
2023/1/16、NBAデータサイトBBall Indexが今季’23の影響指標LEBRON(※)を公開しました。
※:英語で言うと“Impact Metrics”。超ざっくり言えば、チームへの影響度を比較的重視した総合指標(英語で言うAll in 1 Metrics、Catch All Metrics)。
LEBRON、RAPTOR、EPM、RAPMなど沢山の種類があり、個人スタッツの他コートにいる時といない時のチーム成績の差on/offスタッツなど非常に多くの要因が考慮されます。
ボックススコア(個人スタッツ)を重視する総合指標(BPM、TPA、WS、PERなど)を補完できるという面でも重宝されています。
総じてアイテスト(実際に試合を見て評価する事)と併用するのが無難/理想ですが、試合を見たり細かく詳細なスタッツを多く見たり長い時間をかけて調べるヒマがない時にも便利と言えば便利。LEBRONについての詳細はこちら
↑で(雑に)補足説明をしていますが、まぁあまり深く考えないで、「ドラゴンボールの戦闘力」「キン肉マンの超人強度」のように気軽に楽しんで頂ければ。
というわけで今季LEBRONのTOP10ランキングは以下。2023/1/16時点。LEBRONの詳細説明へのリンク。
O-LEBRON(オフェンス面のみにフォーカスしたLEBRON)とD-LEBRON(ディフェンス面のみにフォーカスしたLEBRON)のグラフ。
ついでに今季’23の他の影響指標・総合指標のランキングも見てみましょう。2023/1/16時点。※画像クリックで拡大
まずFive Thirty Eightが扱うRAPTORのTOP15ランキング。RAPTORの詳細説明へのリンク。
Dunks&Threesが扱うEPMのTOP13ランキング。EPMへの詳細説明へのリンク。
BBRが扱うWS、WS/48、BPM、PER、VORPのTOP20ランキング。BBRのGlossary(用語説明集)へのリンク。
WS。
WS/48。
BPM。
PER。
VORP。
NBA Mathが扱うTPAのTOP24ランキング。TPAの詳細説明へのリンク。
他にも沢山あるんですけど、まぁ載ってる名前は上記と似たり寄ったりです。
とりあえず今回はこの辺で。ではまた。
余談。「気軽に楽しむ」だけではなく、総合指標やAdvanced Statsアドバンスドスタッツについて少し突っ込んだ見方もしてみたい方向け。
上記の総合指標やアドバンスドスタッツと呼ばれるものは、大抵複雑な計算式を用いて算出されています。
ジョン・ホリンジャーが考案したPERは「総合指標のパイオニア」とも呼べる指標で、「古い」とも言える指標ですが、それですら以下の複雑さ。
上記計算式で算出された数字を更にその年のリーグ・チームのペースで調整して↓、やっとPERが算出されます。
私はPERや他総合指標、アドバンスドスタッツをファンとして楽しむのには計算式を正確に覚える必要はないと思っています。勿論覚えるに越したことはありませんが、私は覚えてないですし、それでも十分楽しいです。そもそも最近の総合指標は詳細な計算式を公開にしていないものが殆どですしね。
ただし、「アドバンスドスタッツを楽しむ上で知っておいた方が良い事」はあります。「アドバンスドスタッツを楽しむには計算式を正確に覚える必要はないけれど知っておいた方が良い事がある」と思いながら私は各種アドバンスドスタッツ(ここでいうアドバンスドスタッツは複雑な計算式や係数・変数を用いて算出されるスタッツ)に接しています。
「知っておいた方が良い事」とは「そのスタッツが持つ意味・概念」です。
アドバンスドスタッツに限った話ではありませんが、スタッツには計算式があり、その計算式とそこから算出された数字に人は意味・概念を見出します。
例えば。PPGは「Total Pts/G」という計算式を持ち、PPGは「1試合平均でどれくらいの量の得点をしたのか」という意味を持ちます。 3P%は「(3PM)/(3PA)」という計算式を持ち、「3Pをどれだけの確率で決めたのか」という意味を持ちます。そのままですよね。
当たり前の事を言ってるだけに聞こえるかもしれません。ところがどっこい、これが中々に厄介で面白いんです
PPGは「1試合平均でどれくらいの量の得点をしたのか」を表していますが、それをそのまま「PPG=選手の得点能力」とは捉えられません。私が「選手の得点能力」を調べたい時はPPGの他にアイテスト(実際に試合を観て判断する事)、FG%、3P%、FT%、ショットチャート、オープンorタイトでのFG%、それぞれの試投数、ドローファウル率、USG%、TS%、セルフクリエイト率、被アシスト率、パッと思いつくだけでもこれだけの判断材料があります。2選手を比較するのなら、それぞれのチームメイト・それぞれの時代のリーグ平均なども考慮せねばなりません。
「3Pの上手さ」や他の能力・スキルでも似たようなもんです。
「得点能力」一つ調べるのにこれだけの判断材料があるのですから、「総合的に良い選手」「活躍している選手」を探したり比べようと思ったらそりゃあ大変です。
・・・・・・・・・・面倒臭い。超メンドイ。
まぁ私は暇人ですから、こうして個人ブログで駄文を書き連ねたり、細々としたスタッツを逐一追いかけながらニヤニヤ出来ますが、大半の人はそうではありません。
学校行事・仕事・家事・恋愛等々、他にやらねばならぬ事が山のようにある方が殆どでしょう。
そういった忙しい方々に特に手助けになるのが、本記事で紹介した影響指標や総合指標です。選手の全体像を表しているわけではないし、考案者自身が認める欠点や留意点もありますが、手っ取り早く選手についてイメージ出来て、「ドラゴンボールの戦闘力」や「キン肉マンの超人強度」のように何となくワクワクできるし、選手に興味を持つキッカケにもなり得るでしょう。
そこで話が「アドバンスドスタッツを楽しむ上で知っておいた方が良い事」「そのスタッツが持つ意味・概念」に戻ります。
総合指標・アドバンスドスタッツは従来のPer Gameスタッツ(PPG等1試合平均のスタッツ)やFG%らと違い複雑な計算式を持つものが殆どなので、直感的にその数字が持つ意味・概念を把握するのが難しいです。例え計算式を見ても解釈するのが難しいんです。例えばこれ↓。
Points/ [2*(Field Goals Attempted+0.44*Free Throws Attempted)]
↑はアドバンスドスタッツの中では非常にポピュラーで計算式も単純な部類です。
上記はTS%の計算式です。TS%の存在と「TS%はシュート効率を表している」という意味は御存じの方が多いと思います。けど、TS%を知っていても、計算式や「0.44の係数が何を意味していて、そこから考えられる欠点・留意点」にまで思いを巡らせる方は、恐らくですが、その内の半分もいないでしょう。追記:「TS%」について幾つか記事を書いたので詳しくはそちらで↓。
けど、「それで良い」「それで充分」と私は思っています。TS%を楽しむのに「計算式」「係数の意味」を知る必要はないです。100%正確ではなくとも「総合的なシュート効率を表している」という意味を知る、もしくは何らかの独自解釈が出来れば、それで充分だと思います。
他の総合指標・アドバンスドスタッツでも同じです。詳細な計算式を公開していない総合指標でも必ずその指標が持つ意味や概念を説明しているページなりGlossary(用語説明欄)があります。
その指標・スタッツが「どういった意味を持っていて」「どういった能力を計れるのか」「どういった事に用いるのが適しているのか」。
その答えは千差万別です。そこがアドバンスドスタッツやアナリティクスの面白いところだと私は思っています。
影響指標は+/-プラスマイナスやon/offスタッツも考慮するので、ステフィン・カリーやニコラ・ヨキッチ、ジェイソン・テイタムらオンコートNetRtgの高い選手と出場時間を共有する選手・ロールプレイヤーを高く評価する傾向にあります。スターターの弱いチームのベンチプレイヤーを高く評価する事もあります。(一言で影響指標と言っても種類が沢山でそれぞれに違いがありますので一概には言えない部分も大きいです。とりあえずLEBRONの詳細説明へのリンク。RAPTORの詳細説明へのリンク。EPMへの詳細説明へのリンク)
本記事で紹介した影響指標LEBRONで言うと昨季’22の7位はアル・フォーフォードです。その下の8位はケビン・デュラント。
今季’23のRAPTOR WARで言うと、ザイオン・ウィリアムソンは48位です。35位アーロン・ゴードン、41位KCPよりも低い順位です。
もしLEBRONやRAPTOR WARを単なる「選手の総合評価」と解釈するのなら、上記の順位は矛盾があるように感じるでしょう。実際、その手の感想はよく聞かれます。「○○より○○を高く評価してるから、この指標は役に立たない」といった感想ですね。
しかし、私はLEBRONやRAPTOR WARを「選手の総合評価」とは解釈していませんし「役に立たない」とも思いません。長くなるので、ざっくりと言いますがLEBRON他影響指標は「チームの中心選手の影響力」「その中心選手が上手く機能しているか」「影響力の高い(良い)中心選手と良いケミストリーが築けている選手」を探るのに有用だと思っています。
アル・ホーフォードがケビンデュラントよりも「総合的に良い選手」とは思いませんし、アーロン・ゴードンやKCPがザイオンよりも「影響力の大きい選手」とも思いませんが、だからと言ってLEBRONやRAPTORが「役に立たない」とも思わない。「ホーフォード、アーロン・ゴードン、KCPはテイタムやヨキッチと相性がすこぶる良くて共に良い影響・貢献をチームにもたらしている素晴らしい選手」と捉えます。
もし自身のアイテストと一致しない、かけ離れた結果があったとしても、「なぜそうなったか」を考え探ります。スタッツは認知バイアスを修正するのにも有効ですから、「アイテストとスタッツ、どちらを選ぶか」ではなく「併用していきたい」と思っています。
ステフのキャリア3P%は歴代13位でしかなく、ステフの「3P能力」を正確に伝えているとは言えませんが、だからと言って「3P%は役に立たない」とは誰も思わないでしょう。それと似たような事です。
結局は、総合指標と言えど
あらゆるスタッツ/指標はコンテキストが大事で、多角的に用いることが求められます。
って事です。
何だか偉そうな事ばかり書きましたが、私はアナリティクスやスタッツに関しては初心者でカジュアルもいいとこ。子供の頃、母の実家で兄や従兄弟たちと裏山を探検しに行った感覚と少し似ています。何が楽しくて何が危険かもよくわからないけれど、楽しそうにしてる兄たちや見た事のない風景が、私を少し大人にしてくれてる気がしました。
ありがたいことに最近はオンライン講座やら何やらで無料でアナリティクスの基礎(数学や論理学、統計学、確率論他)について学べる機会が沢山ありますけど、時間がいっくらあっても足りない。何より頭の容量が足りないし要領も悪い(ダジャレではない)。試合を観る時間が減っては本末転倒。
学べば学ぶほど知りたい事は増えていくし、裏山を探検してた頃よりも何十も年を取ったはずなのに、NBAを観ている時、好きな事に触れている時は大人になりきれません。不条理に喜怒哀楽を爆発させております。
アドバンスドスタッツやアナリティクスは、とかく「無粋なもの」「スポーツの情熱に水を差すもの」とも捉えられがちですが、私にとっては「裏山」です。本来は第三者へ偉そうに語れるほど造詣が深いわけでもありませんが、道を知らずとも探検は楽しめます。手を引いてくれる兄の様な存在、アナリティクスについて博識で、それをシェアしてくれるアナリストやライターは沢山います。
つまり・・・・
唐突に自分の好きな事・楽しい事についてダラダラと語りたくなった。本記事はそれだけの記事です。次回からはもう少し自重します。
なにはともあれ、いつにも増して長い戯言と自分語り。お付き合いいただき有難うございました。では。