創造神ネイスミス教授も予見できなかった“現代NBAの変化”と“手書きのメモの落札額”。可用性GOAT候補ランキング&各スポーツファン人数ランキング他。
メジャースポーツの中でバスケットボールは歴史の浅い方です。
ジェームズ・ネイスミス教授によって考案され、1891年12月21日に初の試合が行われました。
球技、陸上、水泳、格闘技etc.スポーツ競技の中で明確に考案者がわかっているものは珍しいです。二千年前の古代文明にルーツがあったりで不明なものが殆ど。(一応バスケにも古代文明起源説を唱える方はいます)
ファン数による人気スポーツランキング。(ファン数の計測方法は不明)
バスケの歴史はたった133年。誕生から僅か45年後の1936年にはオリンピック競技に採用されました。今も市場は拡大し、ルールなど変化が繰り返されています。
歴史が浅い分、非常に密度の濃い年月でしたから、語ろうと思うとキリがありません。
なので近年特に“気になる変化”についてだけ。
“気になる変化”とはズバリ“選手への負担の増加”です。バスケは以前よりも“疲れる”スポーツになりました。特にNBAでは。
2010年代後半、NBA界隈においてロードマネージメントはあたかも「問題」のように騒がれました。
「ロードマネージメント=怪我をしていない選手を休ませる事」と捉えられる事が多かったんです。
どの界隈でもそうですが、何らかの用語・言説が流行るとソレは繰り返し流布されます。単純化して多くの人間に伝えられます。(必ずしも悪い事ではありません)
ただ、
本来ロードマネージメントというのは「パフォーマンスを最大化するための作業計画・設計」の事です。
試合中、スプリント(短距離での全力疾走)と跳躍運動とフィジカルコンタクトが頻繁に行われるバスケにおいて、特に試合時間が48分でレギュラーシーズンだけで82試合が行われ、長時間移動・時差・標高差も伴うNBAにおいて、適切なロードマネージメントを組む事は極めて大事です。
バスケは誕生時、前後半15分づつのスポーツでファウルも3回まで、勿論3Pもありませんでしたが、近年はペースが増加しトランジッションも増えました。体重の重いビッグマンも3Pをケアしなきゃいけない場面(守備範囲・走行距離)が増え、軽い選手もスクリーンアクションに伴うフィジカルコンタクトが増えました。
マイク・コンリー曰く
僕はフィジカルな時代でもプレイしていた。我々(2008~2019グリズリーズ)はフィジカルなチームで、現代とは違う負担があった。痣や打撲を抱えながらプレイしていた。
現代は48分間全力疾走しなければいけない感じだ。より多くのポゼッション、より多くの非接触型損傷(non-contact injuries)。多くの選手たちがふくらはぎやハムストリングスなどに問題を抱えている。以前はそこまで多くなかった事だ。
ーFOXスポーツインタビューから一部抜粋翻訳 引用元記事へのリンク
しかし、その現代バスケのリスクが語られる事は少ないです。選手が語れば「ソフト」と捉えられかねませんし、メディアパーソンやファンがそれを語ろうとすると「無粋」になりかねませんし、いずれにせよ楽しい話題にはなりづらいでしょう。今の私もそれなりに気を使って書いています。
ただ繰り返しますが、NBAにおいてロードマネージメントは非常に重要です。私個人にとって興味深い分野でもあります。「もっと選手を休ませるべき」という意味ではなく、「コート内外で如何に温存とインテンシティのバランスをとるか」はチーム・コーチ・選手の個性が出ているようで面白く感じるんです。不謹慎かもしれませんが。
今季2024プレイオフ開幕前後、各チーム主力選手に怪我が相次ぎました。どのチームも満身創痍・疲労困憊なシーンが少なからず垣間見えます。(追記:本記事執筆後もタイリース・ハリバートンがハムストリングスを負傷。どうかお大事に)
大雑把に言うと怪我は接触型損傷(contact injury)と非接触型損傷(Non-contact injury)に分ける事ができます。
接触型は大体において偶発的で予防の難しいモノです。
非接触型損傷でも、アキレス腱や前十字靭帯など腱・靱帯組織のふとした捻じれによる断裂は極めて予防が困難です。どれだけ対策しても怪我する事はあります。
ただ、そこにはプロアスリートとしての能力差があります。所謂「可用性」とか「怪我への耐性」と言われるものです。どれだけコンディショニングに大金と労力をつぎ込んでも怪我する時はするけれど、少しでもその可能性を減じ、長く多くの時間ハイパフォーマンスを遂行していく為に選手たちは努力を重ねています。チームもその為に多くのトレーナーや人材を確保しています。
以下の選手たちは可用性的に史上屈指のシーズンを過ごした選手と可用性業界(?)GOATのレブロン・ジェームズ。
2019レギュラーシーズン、アイソレーションポゼッション数ランキング。
2016レギュラーシーズン、総走行距離ランキング。
歴代レギュラーシーズン、キャリア総出場時間ランキング。PPG他併記。以下全て2024/5/21時点。
歴代プレイオフ、キャリア総出場時間ランキング。
コンディショニングの優秀さやロードマネージメントの重要性を語ろうと思うと、献身を重ねた結果怪我をしてしまった選手へのディスリスペクトにも繋がりかねず、気分を害する方もおられるでしょう。
ただ私は一人のNBAファンとして、例えそれがポジティブな結果でなくとも、多くの試合に出場して喜怒哀楽をもたらしてくれる選手へは称賛を送りたいと思っております。スキルセットと違いハイライト化・視認化しにくい分野で(レブロン以外は)褒められる事が少ないですから尚更です。当ブログで度々取り上げているのはそういう理由もあります。最近ですとミカル・ブリッジズ、デマー・デローザン、ジェイソン・テイタム、ニコラ・ヨキッチらですね。
2020以降レギュラーシーズン、キャリア総出場時間ランキング。
2020以降プレイオフ、キャリア総出場時間ランキング。
ここ6シーズンNBAで連覇がないのも、前年6月までのハイパフォーマンス維持の疲労蓄積が一つの要因として挙げられるのではないかと考えております。勿論数多くある内の一要素ですけどね。
2017以降優勝チーム・MVP・ROTY一覧。
主力選手の怪我は疲労が蓄積されるシーズン後半になるほどリスクが高まり、チームやリーグにとっても大打撃。さりとて休ませ過ぎればレギュラーシーズン戦績は悪くなりプレイオフに向けて余裕がなくなる。リーグにとっても目玉選手が少なくなる。
うーん、ジレンマ。
「レギュラーシーズンを82試合よりも少なくする」っていう案もあるんですけど、興行(収入)を少なくすると集まる才能も減ります。選手というよりバスケ以外の才能(組織運営・経営者・トレーナー・ドクター・コンテンツクリエイター等)の流出に繋がります。特にアメリカのスポーツエンターテインメント業界は競合他社が非常に多いです。かけられるお金(収入)や才能が減ればプレイ環境は悪くなります。
やっぱりジレンマ。
・・・・・まぁ、なるようになりますし、これ以上はファンが気にしてもしゃーないですね。
ちなみに以前当ブログで取り上げ、私が尊敬してやまない理学療法士ジュディ・セトさん。
レイカーズ退団以降、公的には音沙汰ありませんでしたが、先日大谷翔平のリハビリを手伝う姿が。
NBAにしろMLBにしろ、選手・コーチ以外の尽力もヒシヒシと感じる今日この頃。
今回はこの辺で。ではまた。
余談。
メインではニックス実況を務めるマイク・ブリーンが先日のニックス対ペイサーズ第7戦で分け隔てなく盛り上げてる姿には、試合と同じくらい感動しました。ウォルト“クライド”フレイジャーと一生一緒に実況やって頂きたい。
私、英語が今よりもずーっと苦手だった頃から各チームの実況解説者たちが大好きでございまして、当ブログでも隙あらば語りたいと思ってるんですけども、割と自重しております。
マイク・ブリーンはニックス戦以外でもESPNの全米放送にで実況を務めますので、大舞台でその御声を拝聴できますが、「ああ、大舞台でその実況解説が聞きたい」って実況解説者も沢山います。
ホーネッツの実況エリック・コリンズとか。
レイカーズの解説ストゥ・ランツとか。
他の実況解説者についてはまた隙を見て。