【NBA】リムプロテクトとペリメーターIsoディフェンスの相関関係。NBA2023プレイオフチームと過去NBAファイナル進出チームのディフェンシブレーティング他各種指標で考えるディフェンス評価の在り方。
昨今NBA公式・非公式を問わず、様々なスタッツや指標が新しく生まれています。
便利なデータサイトやアプリも多いです。
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とはいえ「数値化や客観的評価の難しいプレイ」というのはまだまだ存在します。
これだけ多くのスタッツ・指標が生まれながら“ディフェンス評価”についてはいまだに曖昧な部分が多いです。先日の記事で取り扱った“オフボールムーブメント”と同じく超大事な要素であるにもかかわらず。
ディフェンス/オフボールムーブメント評価に限らず、「数値化の難しい動き・プレイ」への評価は往々にして曖昧になりがちです。
ステフィン・カリーやニコラ・ヨキッチを指して「オフェンスの良い選手」といった評価はあまり見られません、もっと具体的な評価や解説が与えられます。“オフェンスが良い”のであれば、「オフェンスのどの部分が凄いのか」「その凄さがどう数字に表れているか」の詳細なスタッツ・指標も同時に記載している記事や意見が殆どです。
しかし、ドレイモンド・グリーンやアレックス・カルーソら“ディンフェンスが良い”とされる選手、もしくは“ディフェンスが悪い”とされる選手への評価は「何が得意で何が不得意か」などの詳細なスタッツ・指標が省かれている事が非常に多いです。
ファンコミュニティ内では「○○は悪いディフェンダーだ」「いや、平均的なディフェンダーだ」といった押し問答も見かけます。MVP候補となって以降世界中のNBAファンの間で幾度となく「ニコラ・ヨキッチは悪いディフェンダーなのか?」についての意見や議論が交わされたことでしょう。
恐れながら言わせて頂きますと、賛否両方で同じような意見ばかりが続くと私は直ぐに飽きてしまいます。ドンチッチやハーデンらへの「言われるほど悪くない」「いや悪い」も同じです,
所謂「良いディフェンダー」にも不得意な部分はあり、「悪い」とされるディフェンダーにも得意な部分は必ずあります。“良い・悪い・平均的”いずれの評価を下すにせよ、その得意不得意の詳細な部分に注目せずして妥当な評価を下す事は難しいはずです。(あくまで妥当な評価を下したい時での話です。ファンコミュニティ内での議論は「楽しむ事が第一の目的」でしょうから、自由である事の方が大事だと思います)
少し違った言い方をすると、いくら苦手な部分があっても「良いディフェンダー」にはなり得ますし、いくら得意な部分があっても「悪いディフェンダー」になり得るはずです。同じ選手でも「良いディフェンダー」「悪いディフェンダー」両方に1プレイ単位・1試合単位・1シーズン単位・全ての単位で変わり得ます。
ルディ・ゴベア、ジョエル・エンビード、ブルック・ロペスらビッグマンのエリートなリムプロテクトはスイッチにより外へ連れ出され、ハンドラーやウィングとの1on1オンを強いられる事により度々無効化され、エリートなリムプロテクターがむしろ弱点となった事は幾度となくあります。
ショットブロックに長けていても、ポジショニングやボックスアウトで劣る選手もいます。その逆の選手もいます。
アレックス・カルーソやドリュー・ホリデーらもPOA・ペリーメータディフェンスでは卓越していても、ビッグマンにポストアップされればミスマッチであり弱点となります。
ボールプレッシャーに秀でていても、スクリーンナビゲイトやパッシングレーンディフェンスが苦手な選手もいます。
BBall Indexの指標によるリムプロテクションとペリメーターIsoディフェンス能力の相関関係図。1000分出場者対象。
念を押しますが、私が言いたいのは「ゴベアやカルーソら“ディフェンスが良い”とされる選手のディフェンスは実は大したことない」「ヨキッチは実は良いor悪いディフェンダー」ではなく
「“ディフェンスが良いor悪いor平均的”とされる選手全てに得手不得手があって、細かな単位で注目し理解を深める事が、有益で面白いディフェンス評価へと繋がるのではないか」って事です。
過去10シーズンのAll-Defensive-Team一覧。
「ディフェンスが良いチーム」を評価するため・探すために用いられるスタッツは大抵DefRtgです。いつぞやも言いましたが、近年は主力選手の欠場が盛んになり、プレイオフに向けての調整や、プレイオフで相手の弱点を突く戦術も今まで以上に顕著になってきているので、相対的にレギュラーシーズンでのDefRtg他チームスタッツの信用性は落ちてきています。(「レギュラーシーズンでの成績は無意味」だとかいう意味では全くないです。誤解を招きそうな書き方で恐縮ですが詳しくは下記関連記事参照。)
「ディフェンスが悪いチームは優勝できない」「過去20シーズン、DefRtgが12位以下で優勝したチームはいない」等といった言説が囁かれていましたが
2023優勝のナゲッツのレギュラーシーズンDefRtgはリーグ17位でした(Cleaning The Glass準拠)。
しかし、2023プレイオフ20試合でのDefRtgは16チーム中3位でした。(プレイインでの試合は含まず)
レギュラーシーズンDefRtgで1位だったキャバリアーズと然程変わらない数値で、2位グリズリーズや3位セルティックスよりも低い数値です。両チームと同じくレイカーズとヒートを相手にしています。デビン・ブッカーやケビン・デュラントのいるサンズも相手にしています。
このDefRtg順位たちが意味するところは一体何でしょうか?
「レギュラーシーズン中もクラッチシチュエーションでのDefRtgやスターターたちのオンコートDefRtgは悪くなかったから、元々ナゲッツのディフェンスは実は良かった」「プレイオフでは偶然相手のシュートが入らなかっただけ。ナゲッツのディフェンスはやはり良くない」「レギュラーシーズンでは悪くて、プレイオフで良くなった」等々色々な意見・感想があるでしょうが、私が得た感想を簡単に言い表すと
各種Rtgは“重要な結果”ではあるが、その後を占うための“指標・道しるべ”とするには具体性に欠きすぎている
となります。
つまり、選手個人へのディフェンス評価と同じです。
「“ディフェンスが良いor悪いor平均的”とされるチーム全てに得手不得手があって、細かな単位で注目し理解を深める事が、有益で面白いディフェンス評価へと繋がるのではないか」
DefRtgが良いからと言って隙がないわけではないし、その隙は相手によって致命的なものになり得るかもしれません。逆にDefRtgが悪く隙が大きくとも、プレイオフでその隙をカバーする術は用意できるかもしれません。
その“隙”と“カバーする術”を具体的に探す事が有益で面白い評価に繋がるんじゃないかと。個人ディフェンス評価・チームディフェンス評価ともに。
さらに突っ込んで言えば、ディフェンス評価とオフェンス評価をハッキリと分けては評価できないとも思います。抽象的な意味ではなく、相手にライブボールターンオーバーを強いるディフェンスをすればイージーなトランジッションや得点期待値の高いポゼッションが増えます。確率高くシュートを決め、相手オフェンスをベースライン後方から開始させれば、トランジッションポゼッションを与える事もなく自軍ディフェンスを整える時間もできます。
オフェンスで大きな役割を多く担う選手が一人いれば、他のチームメイトはディフェンスに注力しやすくなります。
便宜上分けて評価するのが当然ですし、私も常日頃そうしてますし今後もそうしますけど、やっぱりバスケはチームスポーツで一人の選手を切り離して評価する事は難しく、その試合はインタラクティブ(双方向)に多くの事が関係し合っていて、勝利の功績や敗北の責を少数の人間に集約する事も本来は出来ない。
ディフェンス評価について細かく考えようとすると、大抵こういった無駄に小賢しい考えへと陥っちゃいます。
ペリメーターで簡単に抜かれまくる選手がいても、それを直接表すスタッツは現状ないですし、その不手際はDFG%(リムでの被FG%)やペイント内での失点数に表れて、出来る限りヘルプに頑張ったはずのビッグマン・リムプロテクトが悪いみたいになっちゃったりもしますし。
ローテーションで一人でも動かない選手や間違えた選手がいたら、正しい動きをしている選手も途端に無意味になりますし。
リムプロテクトはショットブロックとイコールでもリムプロテクター一人によってなされるものでないですし。POAディフェンスやペリメーターディフェンス、リバウンドもまた然りですし。
兎に角ディフェンスは常に他選手と連動的かつスタッツ・指標が少ないので、オフェンス評価以上にアイテストへの依存度が高く、評価が人によりブレやすく難しいです。選手個人のディフェンス評価は特に。
・・・・うーん。
試合がないオフは小賢しい事ばかり考えちゃいます。
兎に角試合がないのが悪い。ワールドカップ&開幕はよ。
我ながら神経質すぎる内容な気もするので、明日は明るく楽しげな記事を書くよう努めます。
今回はこの辺で。ではまた。