ここ10年&歴代でのペースと走行距離の推移。2024最も走ったチームランキング他。
「近年のNBAはペースが速くなっている」というのは聞いた事のある方が多いと思います。近年と言っても、ペースが上昇し始めたのおよそ10年前で、2020年以降は99前後を保っています。
2013~2024レギュラーシーズンのリーグ平均推移(右端がペース)。
「ペースの数値が高い」という事は「ポゼッション数が多い」≒「トランジッション(攻守の切り替え)が多い」「アップテンポ」となります。
余談:オフェンシブリバウンドを取った際に実況解説が“Extra possession“「追加のポゼッション」とか「ポゼッションを得たor与えた」みたいな事をよくおっしゃいますが、スタッツ的にはオフェンシブリバウンドを取ってもポゼッション数は増えません。実況解説は「シュートをする機会が増えた」って意味で言ってるだけですので間違っているわけではありませんが、勘違いを生んでしまう事も多いようで、NBA.comのGlossary(用語解説)ではわざわざ注意書きまでしてあります↓。
話を戻しまして
ポゼッション数・トランジッション数の増加だけでなく、ハーフコートの攻防でも現代のバスケットは疲れやすい環境にあります。各選手(特にビッグマン)のシュートエリア拡大によりケアしなければいけない範囲が広がり、スクリーンアクションの増加などによりローテーション・オフボールでの運動量も増えました。以前はシャキール・オニールやマーク・イートンのようなリムプロテクターがペリメーターに引きずり出されてガードと1on1する事は稀でした。リード&リアクトやチェスマッチ(相手の動きを読み対応し合う事)も増えたので頭のカロリーも使います。
2024レギュラーシーズン各チーム1試合平均走行距離ランキング。
2024レギュラーシーズン各チームのペースランキング。
で、10年前。
2014レギュラーシーズン各チーム1試合平均走行距離ランキング。
2014レギュラーシーズン各チームのペースランキング。
前述の通り、10年前の方がペースが遅いです。当然走行距離も現代の方が多くなります。
そして、10年間でのペースの増加率よりも走行距離の増加率の方が若干高くなっています。ペースの増加率が概ね4~5%、対して走行距離の増加率は6~8%ほどあります。やはりトランジッション以外・ハーフコートの攻防でも走行距離は増えてます。
そりゃ非接触型の怪我は増えるし蓄積疲労も増えます。
TOP選手の出場試合数やプレイタイムは減少傾向にありますけれど、それは決して「選手のコンディショニングやモチベーションの低下によるものではない」という(雑な)擁護記事。
今回はこの辺で。ではまた。
おまけ。
10年前と比べペースは増加傾向にありますが、「現代NBAは過去一番ペースが速いか」と言われればそうではありません。ペースのピークは1974年から1980年代まででした。
歴代でのリーグ平均ペースランキング。
戦術やルールの変更やその他諸々あってペースは時代時代で変動しております。
変わっていないのは「プレイオフではペースが遅くなる」という点。
プレイオフでのリーグ平均ペースランキング。
いずれの年もレギュラーシーズンよりもペースが低下。
昨季2024プレイオフ各チームのペースランキング。
プレイオフではディフェンスのインテンシティが上がり、オフェンスはより慎重(計画的)になり、ディフェンスの戻りが速くなり、不用意なミスや無謀なプレイが減る事でファストブレイクやトラジッションの攻防が減り、ハーフコートでの攻防が増える。プレイオフでペースが落ちる理由として挙げられるのは概ねこんな感じだと思います。
勿論異論のある方も大勢いるでしょうけども、今後も「プレイオフではペースが落ちる」という傾向は変わらないと思います・・・・・多分・・・いやもしかしたら・・・どうだろ?