あまり類を見ないNBAの試みL2M Report/ラスト2ミニットレポートはファンに何をもたらしてくれるのか。制度導入以降の正誤率はどれくらい?

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あまり類を見ないNBAの試みL2M Report/ラスト2ミニットレポートはファンに何をもたらしてくれるのか。制度導入以降の正誤率はどれくらい?

まず御存じない方のために、L2M Report/ラスト2ミニットレポート(以下L2Mレポート)をざっくり説明すると以下。

※:Last Two Minute Report、ラスト2ミニットレポート。試合後にリーグが正式に出す最後の2分間のレフェリングの正誤判定。試合終了までの残り2分間で3点差の時間帯があった試合(要は接戦)でのみ報告されます。

リンクはこちら

実際のレポート内容はこんな感じです↓。


2015年にNBAがこの制度を導入した目的は「ファン/メディア/チームへ透明性と理解を深める事」とされています。

プロスポーツでは珍しい制度だと思います。
L2Mレポートで「あのコールは間違っていた」「コールされるべきプレイが見逃されていた」と判定されても試合結果は覆りません。ボックススコアが変わったり選手の得点/スタッツが取り消し・変更されたりすることもありません。(L2Mレポートとは別にスタッツ・テクニカルファウルが取り消される事やコモンファウルがフレグラントファウルにアップグレードされたりする事あります)
誤解を恐れずに言うなら、「誰も得しない」ようにも思える制度です。審判が正しいコールをしても褒められることは稀で、間違っていたら責められ、結果が覆えるわけでもありませんのでファン/選手に後味の悪さが残る事もあります。

実際導入当初、レフェリー組合/レブロンやKD他選手etc.多方面から反対の声が上がりました。

特にレフェリー組合は強く反対。以下は導入2年後の声明。

1.試合結果に影響を与えていないのに実施する意味はあるのか

2.レフェリーへの敵意を助長する。incorrect call(正しくないコール)が注目されて、 correct call(正しいコール)は注目されない。

3.導入して2年経つが「理解や信頼性」が高まった証拠は見られない。

4.統計(数字)に焦点を当てる事は統計的なレフェリーを生み、ゲームの流れやフェアプレーとのバランスを良くするレフェリーとは反するもの。

我々が公に批判される事に不満はありません。単純に「現在のL2M プラットフォームは適切ではない」と考えています。

フェアな声明だと思います。NBAに限らず、(妥当であれ何であれ)審判へのヘイトやディスリスペクトは高まる一方で、それが回復される機会は非常に少ないです。
CC Percentage(正しいコールをした割合)95%以上とは極めて優秀な数字ですが、それを褒めるNBA選手/ファンはあまり見ません。

近年は1つのL2Mレポートで大体17~21回のプレイが見直されています。約4回何らかのコールが発生し、その95%~98%は正しいと再評価されています。2019シーズン以前約2.5回あったincorrect non-call(正しくないノンコール)も2020シーズン以降は約1回に減っています。数字に波があるのは恐らくルール変更によるものも大きいかと思います。

以下画像は制度導入以来のL2Mリポート正誤率他一覧。2022/11/4時点。

ここまでレフェリーの肩を持つような記述が続きましたが、「レフェリーを擁護する」「レフェリーへのヘイト/ディスリスペクトを止める」のが、この記事の主な目的ではありません。(それもありますが、いつだって当ブログの目的は「楽しむ事」です)

私はL2Mレポート制度自体は素晴らしいと思っていますし、楽しむ事も多いです。L2Mリポートのおかげでレフェリングに関する知識は多少なりとも増えました、この記事を書いている最中も色々と調べたりして楽しんでいます。

しかし、一人のNBAファンとして「L2Mレポートは扱いに気を付けなければならない制度」とも強く思っています。

なぜなら、「L2Mレポートは試合結果やファンの“楽しい/嬉しい”に水を差す事も容易に出来てしまう」からです。

「実はあのクラッチプレイがバイオレーションだった」「あれはファウルではなかった」「カウントされるべきでなかった」etc.様々な再評価がL2Mレポートの中にあります。

そしてファンコミュニティ内ではL2Mリポートを根拠に「あのクラッチプレイ/試合結果は不正だ」といった投稿/意見も見かけます。
気持ちはよーっくわかります。私も贔屓の選手やチームが間違ったレフェリングに晒された時には腹が立ちますし声を上げる事だって珍しくありません。

ただし、“声を上げるのは時と場所と立場(場合)/TPOをわきまえながら”です。

クラッチプレイで勝利したチームのファン/コミュニティに対して「L2Mリポートによれば、あれバイオレーションだから」なんて言ったって空しいだけです。誰も幸せには・・・・

・・・・・こんな顔して煽られたら流石に言いますけど↓。


失礼。話を戻しまして。

L2Mレポート制度の目的は、あくまで「ファン/メディア/チームへ透明性と理解を深める事」です。
ただ、「それ以外の目的では使うな」とまでは思いません。負けてしまったチームのファン/メディアが“自チームコミュニティ内で皆を慰めるため/悲しみを和らげるため”に「L2Mレポートによれば、あのコール/ノンコールは不正だった」と言うのは、責められるべき事ではないと思います。

しかし、悲しみを和らげるためなら他人の楽しみを損なって良いわけもありません。

繰り返しになりますが「L2Mレポートは扱いに気を付けなければならない制度で、TPOをわきまえながら引用し、楽しむべき制度」、そう自戒しております。

ぶっちゃけて言えば、ミスジャッジは最後の2分間以外にもあって、それもゲームの一部分ですしね。開き直るべきでもないと思いますけど。

雑にまとめると「L2Mレポートは反対に遭いながらもNBAがファンのために考えてくれた先進的な制度。誰かの楽しみに水を差すためではなく、楽しみを増やすため/悲しみを減らすために使いたい」って感じです。

今回はこの辺で。ではまた。

おまけ。
調べてる最中に見つけた過去のL2Mレポートに関する画像の一部。過去シーズンの画像なので、ちょっとした雑学程度に捉えていただければ。

L2Mレポートによれば、「2021シーズンのヨキッチ/ゴベア/WCJ/グリフィン他は正しくないコール/ノンコールで不利益を被ってます」って画像。
こっちは2018シーズン2月時点のもの。

両方とも一見「だからなんだ ?」って画像ですけど、こういう細かい事にも注意を払ってるから興味深い考察や記事が生まれるんだろうな、と些か感心します。

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