NBA全チームのベンチユニット+/-プラスマイナスランキング、1位は“層の厚いチーム”で最下位は“最悪なベンチユニット”なのか。

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NBA全チームのベンチユニット+/-プラスマイナスランキング、1位は“層の厚いチーム”で最下位は“最悪なベンチユニット”なのか。

NBA Universityから。
ベンチユニットの総プラス/マイナスBEST6とWORST6チーム(日本時間2022/11/07時点)。

全30チームのベンチユニット総プラス/マイナスランキングは以下↓。

勝敗数とは必ずしも連動していないのが面白いですね。

この+/-「プラス/マイナス」(コートにいる時の得失点差)と言うスタッツは中々に厄介、というか解釈の難しいスタッツです。(そもそも10試合程度なのでサンプルサイズが小さいですが、本記事ではその問題は脇に置いてます)

あらゆるスタッツ/指標に言える事ですが、サンプルサイズは小さければ小さいほど信用性に乏しく、プラスマイナスは特にその傾向が強い指標とされています。
単一の試合、個人のプラス/マイナスで「選手の出来不出来」を推し量ろうとするのは不適切とされおり、グレッグ・ポポビッチHC(以下ポップ)のプラス/マイナスに関する発言も有名?です。

“All of a sudden, the league slipped the plus/minus (into the boxscores) without any of us knowing about it,”

“It’s the most meaningless thing on the whole sheet. I don’t know where (the idea) came from, who pioneered it, who slid it into the NBA, who thought it was cool.”

”I’ve got no clue, but it’s the most useless thing there is on the whole stat sheet. It’s dangerous. It creates the wrong impressions for players. I hate it.”

“It’s all about who was on the court with you,” 

 “You have to add that into the equation when figuring combinations that work well. It depends who else was on the court with your guys, and on the other team. Without that, it doesn’t tell you anything.”

突然、リーグは我々に知らせる事もなくボックススコアにプラスマイナスを表示させた。

プラスマイナスはスタッツシートの中で最も無意味なものだ。このアイデアがどこから来たのか、誰が思いついたのか、誰がNBAに取り入れることがクールだと思ったのか、わからない。

それがスタッツシートに載る事は無価値であり危険だ。選手に間違った印象を与える事になる。私は嫌いだ。

プラスマイナスをよく理解し、効果的なコンビネーションを理解するには「誰が共にコートにいたか」を考慮しなければならない。プラスマイナスは「誰が共にいて、相手のチームは誰なのか」に依存する。それがわからなければ、プラスマイナスは何も教えてはくれない。

KERRY EGGERS ON SPORTS/PORTLAND TRIBUNEの記事から一部引用/翻訳

ポップは「3P嫌い」発言が独り歩きしてしまって、分析/アナリティクスへの柔軟な姿勢が見過ごされがちです。上記の発言も前半だけ引用すれば「頑固親父」に見えちゃいます。(たまーにポップへ「時代遅れ」みたいなレッテルを張りたがる人もいらっしゃいますし)

当時「3Pは嫌い」の部分ばかり強調されましたが、実は「しかし使わなければならない」とも述べています。ポップは皮肉や真顔でのジョークも多いので解釈が難しかったりします。

話が逸れましたね。ごめんなさい。

とにかくプラス/マイナスとソレを100ポゼッションあたりに換算したNet Ratingネットレーティング(以下NetRtg)は誤解を与えやすい指標です。
大事な事なので、自戒の為にも繰り返しますが

あらゆるスタッツ/指標はコンテキストが大事で、多角的に用いることが求められます

プラス/マイナスやNetRtgだけで選手の善し悪しは判断できませんし、それは他のスタッツにしても同じです。
例えば、「3P%」だけで「3Pの上手さ」を判断はできません。「3P%」は重要な意味を持つ指標ですが、トータル試投数、オープン3P/プルアップ3P/キャッチ&シュート3Pの頻度、優れたスクリーンをセットできるチームメイトの存在etc.「3Pの上手さ」をある程度“正確に把握したければ”多くの要素を考慮しなければなりません。
勿論アイテスト(実際に試合を観て評価する事)も必須です。
(ただ“楽しむだけが目的”なら、んな堅苦しい事言わんと好きに捉えて良いと思います。コミュニティが窮屈になっても良くありませんし、時と場所を選んで私もそうしてます)

上記ランキングで、ウォリアーズは-375とNBAワーストのベンチプラスマイナスを持っています。
それすなわち「ウォリアーズは最悪のベンチメンバーを持っている」なのか?と問われれば答えは・・・・わかりません。
「ウォリアーズベンチのプラスマイナスの悪さは何によってもたらされているか?」はポップの発言にもある通り、複雑な要因が絡んでの事でしょう。
ベンチメンバーのスキルやタレントのせいではなくローテーションが問題なのかもしれませんし、システムが問題なのかもしれません。勝つにしろ負けるにしろ、その原因はいつだって“複合的”なものです。

「プラスマイナスやNetRtgは“結果”を示す指標であって、原因究明や個人の詳細な能力分析にはあまり向いていない」と私は捉えています。ある程度のサンプルサイズがあれば、中心選手の影響力を計ったり効果的なラインナップを探るのには有効だと思います。

「結局何でウォリアーズのベンチプラスマイナスは悲惨な事になってるの?」って話ですが、それはウォリアーズが今まで攻守で優れたスキームと規律を持っていたチームで、それが今季は薄れてしまっているからではないでしょうか。

つまり、ディフェンス面を担当していたマイク・ブラウン元AC(今季からキングスのHCに就任)の不在、チームメイトへの暴力によりドレイモンド・グリーンのボーカルリーダーとしての貢献に陰りが出てしまい、ウォリアーズの強みであったモーションオフェンスや規律のあるディフェンス、攻守でのオフボールムーブメントのスムーズさを、まだ若い選手も多いベンチユニットたちへ順応させる土壌が薄れてしまっているのではないでしょうか。

オットー・ポーターJrやゲイリー・ペイトン2世らの移籍が痛いのは勿論ですが、彼らもウォリアーズでの経験は浅く、にもかかわらず昨季ウォリアーズでの活躍は、まるでウォリアーズに昔からいるかのようなフィットでした。

以下は今季と昨季のオンコートNetRtgとOn-Off(コートにいる時といない時のNetRtgの差)の一覧。

今季’23シーズンウォリアーズメンバーのオンコートNetRtgとオン/オフ差の一覧。
昨季’22のもの。ステフの影響力は昨季今季共に健在です。

※:Ratingレーティング関係の数字(100ポゼッションあたりでの得点/失点数/得失点差)は扱っているサイトによって微妙に算出方法/計算式に違いがあったりして数値にも差があります。しかし、別々のサイトの数値を比較して優劣を計るなどチグハグな使い方さえしなければ、どこのサイトのNetRtgを閲覧/引用して楽しんでも問題ないと思います。
最近はCleaning The Glassがガベージタイムを省いた数値を載せていて人気な印象です。
上記画像はBBRのもの。

ウォリアーズはIsoを多用するチームではなく、ステフにハイピックを用いる際も必ずと言って良いほど次の展開を用意し、相手ディフェンスへ息をつかせるヒマのないほどの連動性のあるオフェンスをします。(ウォリアーズのIsoは1試合平均6.0回で20位タイ。1位はマーベリックス、と言うかドンチッチで16.0。30位はスパーズで2.0)
絶対的なリムプロテクターやオンボールディフェンダーを隙間なく揃えてるわけでもないのに、優れたDefRtgを持っていたのはスムーズなローテーション/リカバリや意思決定を持っていたのも大きな要因でしょう。(今季DefRtgは2022/11/07現在リーグ28位、OffRtgは15位)
言い換えればウォリアーズの強みを発揮するにはケミストリー/BBIQ/戦術理解度が多く求められます。
卓越した身体能力やポテンシャルを見せていたジョナサン・クミンガ(Jokuって愛称好き)、サマーリーグやプレシーズンで躍動していたジェームズ・ワイズマンが苦戦を強いられているのも、タレントの問題と言うよりは前述の理由が大きいのかなと思います。

言いたい事を雑にまとまめすと「どれだけプラスマイナスが悪かろうと、スターターやジョーダン・プールに多額のサラリーを費やしている以上、サラリーの安い選手、ルーキースケールの選手に我慢して時間を費やす事も重要ではないか。ステフに今後も長くウォリアーズで活躍してもらうなら尚更」って感じです。

勿論ワイズマンのスクリーンセッターとしての未熟さですとか、クミンガのハンドリングの拙さですとか技術的に改善しなければならないところも多いと思います。
若い選手の魅力の一つは「成長/改善していく姿が多く見れる」ことだとも思ってますので上記含め期待しております。

ジャマイカル・グリーンが相変わらずイリーガルスクリーンや不必要なスラップ(はたく動作)でファウルするのは逆に安心しますので、そのままでいて下さい。(冗談です)

今回はこの辺で。ではまた。

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