決して無駄に出来ないNBAドラフト指名権。/ドラフト下位指名選手が一年目から多くの出場時間を得て、優勝へと導く選手に?/昨季’22ハーブ・ジョーンズ、今季’23“ビッグボディ”ロディ。/ウォリアーズ、ペリカンズ、グリズリーズ、デンバー・ナゲッツetc.

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決して無駄に出来ないNBAドラフト指名権。/ドラフト下位指名選手が一年目から多くの出場時間を得て、優勝へと導く選手に?/昨季’22ハーブ・ジョーンズ、今季’23“ビッグボディ”ロディ。/ウォリアーズ、ペリカンズ、グリズリーズ、デンバー・ナゲッツetc.

過去のレブロン・ジェームズ、ザイオン・ウィリアムソンのような誰もが認めるトッププロスペクト(その年屈指の有望若手)たちの実際の指名順位は、各メディアのモックドラフトとそう変わりません。大体が大方の予想に近い順位で指名されます。

ただ、指名順位が下がるにつれて、モックドラフトはアテにならなくなります。

なぜか。

NBA DRAFT NETの’19モックドラフト。1位から15位。

実際のドラフト結果。

NBA DRAFT NETの’19モックドラフト。16位から30位。

実際のドラフト結果。



誰もが認めるトッププロスペクトは、上位で再建チームに指名される事が殆ど。
再建チームはトッププロスペクトを中心とした、もしくはそのトッププロスペクトを前提としたチーム作りをしていく事になります。例え指名当時のチームロスターとフィットせずとも、再建中なんですからフロントは比較的躊躇せずロスターをいじるでしょうしね。
仮に、そのトッププロスペクトがそのチームに既にいるトッププロスペクトと役割が被っていたとしても、大きなトレード資産にはなります。
ヘタに冒険するよりは、とりあえず他チームからも需要の高いトッププロスペクトを指名する方が圧倒的にリスクは少ないでしょう。

しかし、ロッタリーピック外(15位指名以下)にもなると話は違ってきます。トレード資産としての価値はグッと下がりますし、指名するチームにはwin nowチームも含まれます。即戦力が欲しいチーム、自チームロスターへのフィットを優先するチームも増えます。
単純に実力・将来性順に指名されていくわけではなくなります。上位ロッタリーピックでもそういった傾向はあるので、

「指名順位が下がるにつれて実力・将来性順に指名されていく傾向は薄くなっていく」と言った方が良いですかね。

そういった事の他、各チームフロントの綿密かつ周到なスカウティングと複雑なドラフトプロセスを経て指名選手・指名選手が決定されるのでしょう。

で、オフシーズンでもない今、何故こんなことを書いているかというとですね。

“ビッグボディ”ロディの2試合連続大活躍がキッカケです。

ロディは1巡目23位指名の選手。

なんですけども、シクサーズに指名されたのをグリズリーズがトレードで獲得した選手(というかトレード前提での指名)。デアンソニー・メルトンを放出してまで。(ダニー・グリーンも同トレードで獲得しましたが、後に再トレード)

メルトンは昨季’22グリズリーズで73試合出場し、層の厚いグリズリーズセカンドユニットの一員として貢献を重ねていましたから、私は大層驚きました。メルトン24歳、ロディ21歳で年齢も近いですし、「グリズリーズフロントは何にそんなに惹かれたんだろ?」と不思議に思いました。

正直今も不思議は不思議。バックコート陣の厚いグリズリーズにとって、メルトンよりもインサイド寄りにマルチポジションなロディはニーズに合っていたって事なのかもしれませんが、まぁ詳細は不明です。

ただ、今は私もめっちゃ惹かれてます。最近の試合やカレッジ時代を観て、めっちゃ惹かれてます。カレッジ時代のロディ動画へのリンク

特徴的な体格から放たれる3P、「ジャンボベイン」なんて呼ぶ方もいました。デズモンド・ベイン、ケニー・ロフトンJr、デイビッド・ロディ、グリズリーズはワイドボディが好きなのかな?(ベインはウィングスパンは短いですけど、筋肉量は凄いです)

兎に角、ロディは23位指名ルーキーでありながら、シーズン開始直後から再建中でもない強豪グリズリーズのローテーションプレイヤーとなりました。(途中幾つかDNPもありました)

今季’23ルーキー出場時間ランキング。2023/3/14時点。※画像クリックで拡大

ロディはルーキー中15位の出場時間、ランキング上位を見ると指名順位の高いルーキー・再建中チームのルーキーが殆どです。

いくらグリズリーズフロントが惚れこんでいたって、それだけではこうはなりません。かといってロディの今季スタッツはルーキー中そこまで突出しているわけでもありません。

じゃあ何がロディの出場時間に繋がっているのか。

華やかなスタッツを残していない下位指名ルーキーが多くの出場時間を得た時、それは何を示唆しているのか。

まず一つは「NBAコーチたちは多くの判断基準を持ち、試合以外でも多くの判断材料を見ている」という事。


基本的に我々ファンは練習風景やチームミーティングを目にする事は殆どありません。ですので、選手の評価基準は「試合を観て得たもの」が主になります。

しかしコーチはそれだけではないでしょう。
仮に一人の選手が試合で大活躍したとしても、その試合に勝ったとしても、その活躍・勝利がチームプランやコーチング、練習によって準備された事を無視したものであったなら、長期的に考えれば大きな懸念材料になりますし、勝手を許す前例が出来れば、個よりもチームを優先したオフェンスや規律のあるディフェンスが生まれづらくもなるでしょう。

試合を観ていて「なんでこっちの活きが良くて活躍してる若手じゃなくて、あっちのベテランばっか重用するんだろ?」と思う事はよくあります。

憶測でしかありませんが、活きの良い若手よりも非生産的に見えるベテランが重用されるのは、若手は戦術理解度が低かったり、功名心の高さからセルフィッシュになりがちで(必ずしも悪い事ではないと思います)、逆にベテランはそういった事は少ないのかな、と感じます。

若手ベテラン関係なく、ディフェンスで迷子になってしまう様な選手は冷遇される印象もあります。オフェンス面での不得手は、その選手をオフェンスに絡めない事で、ある程度不利益を緩和しやすいですが、ディフェンスは受け身で相手に弱点と見なされれば、重点的に突かれる事も珍しくありません。
日増しに増えるピック&ロール、2メンゲーム、各種デザインプレイに対してのスムーズなポジショニング、スイッチや意思決定等々。

2005年から2021年までのピック&ロール割合の推移。

ディフェンスではオフェンス以上にバスケットボールIQを求められるように思います。

そして、下位指名ルーキーにはそういった事に長けた選手が多いように感じます。ファンからはわかりにくいし目立たないけども、チームにとって“痒いところに手が届く”って選手がロッタリー外や2巡目出身に多い気がします。

正直ロディについては、まだわからないことだらけで、ディフェンスに関してもチンプンカンプンです。
序盤ジェイレン・ジャクソンJrやスティーブン・アダムズらの不在もありますから、グリズリーズが本来やりたかったであろうチームオフェンス/ディフェンスも出来てないでしょうし。

ただ、昨季’22ルーキーのハーバート・ジョーンズ(以下ハーブ)とアヨ・ドスンム。ハーブ35位指名とドスンム38位指名、彼らも下位指名でありながら多くの出場時間を得たルーキーでした。

昨季’22ルーキー出場時間ランキング。※画像クリックで拡大

更に昨昨季’21ルーキーのジェイデン・マクダニエルズも28位指名でありながらルーキー中5位の出場時間。

昨昨季’21ルーキー出場時間ランキング。※画像クリックで拡大

ハーブ、ドスンム、ジェイデン・マクダニエルズ。下位指名出身のこの三人に共通している事の一つは「ディフェンスで高い評価を得た/得ている」事です。

過去にはダニー・グリーン46位、ドレイモンド・グリーン35位指名も下位指名出身からチャンピオンチームの名ディフェンダー・重要選手へと大成しました。

ロディ、ハーブ、ドスンム、ダニー・グリーン、ドレイモンドには別の共通点もあります。この5人はカレッジを3年以上経験してからNBA入りしています。
良いディフェンダーには“One and done”(カレッジで一年だけ過ごして即ドラフトエントリーする事)ではなくカレッジバスケを複数年経験してからNBA入りした選手も多いです。下位指名ではありませんが、ミカル・ブリッジズ(10位指名、ビラノバ大に3年在籍)、マティス・サイブル(20位指名、ワシントン大に4年在籍)等々。

ダニー・グリーンとドレイモンドはルーキーイヤーから多くの出場時間を得たわけではありませんが、出場時間を増やしていく過程で、華やかなスタッツを残していたわけではありません。

「下位指名出身選手が多くの出場時間を得るのは、試合外での要素が大きいのではないか」と感じます。

コーチたちに好まれやすい働き、チームのスキーム・規律を遵守するバスケットボールIQと献身を開幕前のキャンプ・練習で示した結果が彼らの出場時間の多さに繋がり、そのバスケットボールIQやディフェンスでの貢献・チームへの献身はカレッジバスケに長く在籍する事により培われたものではないか。

トッププロスペクトは才能に満ち溢れているが故に“One and done”が多く、ある程度ハイレベルなチームディフェンスをする経験が不足している選手も多い。
逆に下位指名選手はトッププロスペクトほど多才ではないからこそカレッジに長く滞在し、ハイレベルなチームバスケを長く経験し、自身の限られたスキルでチームを助ける術を学ぶ。

「分析」とはとても呼べない漠然とした想像ですけど、「人に歴史あり」と言いますか、「あらためて選手の才能・努力・運他色々な事が複雑に絡み合って指名順位やその後の出場時間が決定されているんだろーなー。物語が沢山あるんだろーなー」と少しセンチメンタルな気分になりました。センチメンタル・ジャーニーな気分になりました。私はまだ16だから。

一応説明しますと、センチメンタル・ジャーニーっていう曲の歌詞です。私は16でもないです。


余計に複雑な書き方をしましたが「指名順位の低い選手が良いロールプレイヤーになる」ってのは、よくある事ですし、当たり前な事でもあります。
“指名順位が低い≒大きな役割を任せられる機会は少ない≒ロールプレイヤーとして成長していく”事が多いわけですからね。※

ニコラ・ヨキッチ?・・・・・・・ノーカウント!

※:余談というか補足説明。
「ロールプレイヤー」という単語に「大したことない」とかネガティブな意味合いを見出す方もいらっしゃるかもしれませんが、私が選手を「良いロールプレイヤー」と呼ぶ時は、「スター」と呼ぶ時よりもずっと誉めております。
私はドレイモンドやダニー・グリーンを「スター」と思った事はほぼありませんが、彼らは「スター」よりも余程重要でチームの勝利に大きな貢献をしてきた「ロールプレイヤー」です。
歯車の重要度に大きさは関係ないと思っております。

「運」の一言で片づけたくはありませんが、「巡り合わせ」もキャリアに大きく影響もするでしょう。

トレードデッドラインの少し前までボーンズ・ハイランドは“ナゲッツの期待の若手”でしたが、不満を隠せずクリッパーズへトレード。
心機一転したは良いものの、ラッセル・ウェストブルックがバイアウトで加入。エリック・ゴードン他むしろナゲッツにいた頃よりもローテーション入りが難しくなったのではなかろうか、な状況。

一方シクサーズで2年間まともに出場時間を得られなかったアイザイア・ジョーは、今季開幕直前にウェイブ。・・・からのOKCサンダーにピックアップされ、インスタントスコアラーとしてプチブレイク。

当たり外れも大きいけれど、エキサイティングな3Pスキルを持っているのは両選手似ています。

ボーンズはバスケットボールでの事よりもずっと大変な苦難も経験した選手です。NBAでのバウンスバックも期待しております。

いつにも増してとっ散らかった記事になっちゃいましたが

今回はこの辺で。ではまた。

おまけ。

NBA DRAFT NETによるデイビッド“ビッグボディ”ロディのドラフト前評価。

引用元には採点だけでなく、しっかりとした論評も添えられております。

指名順位予想は圏外。NBA DRAFT ROOMでも49位予想でした。「アテにならない」というより「TOPプロスペクト以外の順位は予想しようがない」んだと思います。毎年ロッタリーピック以降は予想も結果も大抵バラバラですから。

ハーブ・ジョーンズはこんな感じ。

ドレイモンド・グリーン。

やっぱりディフェンスの評価って難しいですよね。

それはそうと“ビッグボディ”ロディの語感が良過ぎて頭から離れないのを誰かどうにかしてほしい。

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