MVPパフォーマンスの続くNBA2023プレーオフ。ヨキッチとシャックとサンズオーナーによる「トムとジェリー」なケンカと仲直り。/サンズが許したイージーレイアップは何由来?/後半への布石となったMPJのカムバック。/デンバー・ナゲッツ、シクサーズ
本日2023/5/10の試合結果。
ナゲッツは本当に「相手にしたくない」オフェンスをするチームだと思います。カッティング、ドリブルハンドオフ、スクリーニングアクションが多過ぎて誰についていようが疲れること間違いなしです。(当然やってる方も疲れます)
今日の試合でサンズはイージーなレイアップをいくつか許しましたが、「サンズが怠惰だった」というよりも「ナゲッツがそうさせた」という方が個人的にしっくりきます。
今日の試合でのナゲッツのショットチャート。
サンズはこんな感じです。
第2Qナゲッツはサンズに大規模なランを許し逆転をされましたが
前半ナゲッツの3Pは8/18。特に前半マイケル・ポーターJr(※)の16得点(3P4/6)は後半のサンズディフェンスにもしっかりと爪痕を残していたと思います。
※:ちょっと脱線して余談。
MPJはルーキーの頃から3Pショットメイキングに関してはNBAでも屈指のものを持っていましたがオフボールムーブメント・スクリーン・ドリブルドライブ・サイズを活かした相手パスコースを制限するディフェンス等々、よりナゲッツに最適化されたスキルセットを成長させているように見えます。
「ちょっとトゥーマッチかな?」ってショットセレクションや判断ミスもありますけど、シューターは消極的になられるよりは、やり過ぎな方がまだ良い気もしますし無問題。第4戦最終盤のトランジション3ミスもドンマイです。
度重なるヘルニア手術からのカムバックでこれだけの貢献はブルック・ロペスやマーケル・フルツらと並ぶ今季2023カムバック賞です。
話を戻しまして。
3Pへのケア・オフボールでの動き・スクリーンプレイでの攻防が増えれば当然疲労も増えるし接触も増えます。疲労が増えれば集中力は損なわれやすくなりますし、接触が増えればファウルも増えやすくなります。ファウルが増えればインテンシティの高いディフェンスはしづらくなります。
第4Q、KDのケアレスなパスをクリスチャン・ブラウンがインターセプトして、戻りの遅くなったKDを尻目にダンクを叩きこんだシーンはそれまでの積み重ねの象徴かと思います。
KDに限らず、今日の結果でサンズメンバーを責めるのはちょっと厳しすぎるんじゃないかなと思う次第です。
誰が相手でもバテさせる、そういうオフェンスをナゲッツはしてます。
それを上回るブッカーのジャンパーとKDのIsoスコアリングがあったから2勝2敗になったわけで・・・・何と言いますか、兎に角とんでもないオフェンス対決です。お互い完璧ではないにしても堅実なディフェンスもした上での。
というか本シリーズでのヨキッチとブッカーはまごう事なきレジェンダリーパーフォマンスです。
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ヨキッチは35.0PPGで1位、13.8RPGで2位、10.0APGで1位、TS%64.6%。
ブッカーは34.6PPGで2位、5.4RPGで24位、7.8APGで4位、TS%70.7%。
決めたシュートを見ても、ブッカーはタフなプルアップジャンパーを幾度となく沈め、ヨキッチはイージーな状況を作る工程が非常に巧みでタフショットはタフショットで決める。
選手としてのタイプというか何もかもが違う二人が似たようなスコアリングスタッツを史上稀に見る高いレベルで同時に記録してるんですから、こりゃあ楽しまにゃ損です。
まぁ今日のブッカーは勝敗のほぼ決した試合最終盤に数字を伸ばしたので、スタッツシートが示すほど調子が良かったとは思いませんけども。兎に角、クリス・ポールが不在の中、KDもブッカーも出来る限りの努力とスキルの高さを見せてくれてます。
皆疲労困憊満身創痍だとは思いますが次も期待です。ファンとは勝手なもんですな。
今回はこの辺で。ではまた。
おまけ。
試合後のシャックとヨキッチのやり取り。
プレイオフでのセンターによるトリプルダブル回数リストで史上1位となった事をシャック含むTNTメンバーから告げられたヨキッチ。
ヨキッチ:いいね。そのリストにシャックは載ってる?
シャック:いや。オレは絶対にパスしなかったから。
煽りよる。
いつぞやも言いましたが、この二人のやり取りはいつもユーモアに富んでいて微笑ましいです。
ヨキッチは以前「あんた(シャック)じゃ僕はガード出来ない」なんて言ってのけた事もあります。(直ぐに「待って、冗談だからね」と弁明)
シャックはシャックで「ビッグハニー」と呼ばれるのを恥ずかしがるヨキッチを執拗にイジリ倒したり。リンク
シャックや元選手のコメンテーターは過激な発言がクローズアップされる事が多くて(それが狙いでそうしてるんだと思います)、どうしても嫌われてしまう事もありますし、私も「ライン越えてません?」って感じる事はあるんですけど、やっぱりバスケ選手への隠しきれないリスペクトがあります。
シャックは尊大な言動も多くて、それに値する偉大な選手です。
にもかかわらず、時にピエロを演じる事も厭わず、ヨキッチやドンチッチのような若い海外選手に頑張ってセルビア語・スロベニア語で話しかけて歩み寄ったりするんですから、あらためて偉大な選手だと思います。コミュニティ/チャリティへの貢献は言わずもがなです。
サンズのオーナー、マット・イシュビアさんとも仲直り出来て一件落着です。
「どーせなら僕の罰金も肩代わりしてほしかったけどダメだった」と、ここでもジョークを言うヨキッチは正しくジョーカー。
マット・イシュビアさんも騒動後に出した声明含めナイスガイです。ヨキッチとお互いよろしくない振る舞いだったと思いますが、元バスケ選手としての闘争心が失われていないのには好感が持てます。
クリッパーズのオーナー、スティーブ・バルマーさんもそうですけど、やっぱり億万長者たるもの溢れんばかりのバイタリティも必要なんでしょう、きっと。
なにはともあれ
「喧嘩の良いところは仲直りが出来るところ」
至言であります。