【NBA】過去3シーズン+-ランキング、歴代総合指標・影響指標ランキング、スピードランキング。NBA2Kでのレーティングからトラッキングデータまで、収拾のつかないスタッツ・指標の魅力と留意点。/レブロン、ヨキッチ、ステフィン・カリー、KD、MJ、ヤニス

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【NBA】過去3シーズン+-ランキング、歴代総合指標・影響指標ランキング、スピードランキング。NBA2Kでのレーティングからトラッキングデータまで、収拾のつかないスタッツ・指標の魅力と留意点。

過去3シーズンのプラスマイナス(オンコート時の得失点差)ランキング。プレイオフ含む。2023/7/10時点。

プラスマイナスや、プラスマイナスを100ポゼッション換算したオンコートNetRtgは必ずしも選手の能力の高さや出来の良さを表したものではありません。

選手の能力とプラスマイナス(各Rtg)にはある程度の相関関係はありますが、それは十分なサンプルサイズが伴っての事で、単一の試合や短いスパンでのプラスマイナスは誤解を招きやすくなります。

グレッグ・ポポヴィッチHCも言っていたように多くの留意点を抱えるスタッツです。

突然、リーグは我々に知らせる事もなくボックススコアにプラスマイナスを表示させた。

プラスマイナスはスタッツシートの中で最も無意味なものだ。このアイデアがどこから来たのか、誰が思いついたのか、誰がNBAに取り入れることがクールだと思ったのか、わからない。

それがスタッツシートに載る事は無価値であり危険だ。選手に間違った印象を与える事になる。私は嫌いだ。

プラスマイナスをよく理解し、効果的なコンビネーションを理解するには「誰が共にコートにいたか」を考慮しなければならない。プラスマイナスは「誰が共にいて、相手のチームは誰なのか」に依存する。それがわからなければ、プラスマイナスは何も教えてはくれない。

KERRY EGGERS ON SPORTS/PORTLAND TRIBUNEの記事から一部引用/翻訳

基本的には他のスタッツや指標と同じです。ソレのみではあまり多くの事は教えてくれないけれど、アイテストやコンテキスト・他の数字と併用する事で有益になり得ます。

あらゆるスタッツ/指標はコンテキストが大事で、多角的に用いることが求められます

BPMやWS/48など総合指標(All in 1 Metrics、Catch All Metrics)、EPMやRAPTORなど影響指標(Impact Metrics)も同じです。

総合指標が作られた意図は「1つの数字で選手の能力・出来を表そう」といったものですが(他にも意図がありますけど省略)、実際はそこまで万能ではないですし、かといって全く役に立たないわけでもありません。

馬鹿とハサミはつかいよう」です。ここ10年20年でできた新しい指標でも、馴染みの深いスタッツでも同じです。

3P%だけで3Pの上手い選手を決めようとしたら、ステフィン・カリーは歴代12位の3Pシューターでしかなくなります。TS%だけでシュートの上手さ・効率の良さを決めようとしたら、ルディ・ゴベアが歴代最強の選手になってしまいます。無茶があります。

キャリア3P%ランキング。以下全て2023/7/18時点。

キャリアTS%ランキング。

だからといって「3P%はゴミだ」「TS%は役に立たない」と言ったら、それもまた無茶があります。

3P%やTS%は多くのNBAファンにとってわかりやすく有用なスタッツで、アイテスト・コンテキスト・他スタッツを添える事で2倍3倍と面白く有用になっていきます。

ステフの3P%で言えば、ステフは厳しいマークに遭いながら史上最多の3Pを打ち、それでいて歴代12位の超高確率3P%を維持している事が、ステフを「史上最高の3Pシューター」たらしめる一因です。

キャリア3PAランキング。

キャリア3P%ランキングと同時にTOP20入りしているのはステフとクレイ・トンプソンだけです。
満票MVPとなった2016レギュラーシーズン時、ディフェンスとの距離毎のFG%/2P%/3P%。オープンだろうがタイトだろうが“お構いなし”でした。

ゴベアのTS%に関しても、ゴベアのTS%の高さは「リム近辺以外でのシュートが苦手で、ほぼリム近辺でしかシュートを打たないが故の高さ」ではありますが

2016~2023レギュラーシーズンのトゥルーシューティングチャート。
positiveresidual

それをゴベア自身が弁えていて、苦手なシュートは打たず、(主にジャズ時代は)リムローラー・スクリーンセッターとしては優秀だったからこその「TS%の高さ」でもあります。

ジャズでの最終シーズン2022のスタッツ。
BBall Index

以上の様に、スタッツ・指標にもシナジー(相乗効果)が存在します。

選手と同じで、1つだけでは価値が低くとも別の何かと組み合わせる事で価値が高まり、新たな発見も生まれやすくなります。

冒頭で言及した総合指標、BPMとWS/48のキャリアランキングを見てみましょう。(※)

 ※:BPMとWSを超ざっくり説明。

BPM(ボックスプラスマイナス)は100ポゼッションあたりでのボックススコア上の生産性・効率性を表しています。
ディフェンス評価は不得手です(ポジショニングや連携の良さ等は考慮されていない)。
0をリーグ平均として
+10.0は史上最高クラスのシーズン(ピークのレブロンやMJ)。
+8.0はMVPシーズン級。
+6.0はAll-NBAシーズン級。
+4.0はオールスター級。
+2.0は良いスターター。
といった感じ。

WS(ウィンシェア)はチームの勝利数をボックスコア上の貢献度を基に、各選手へ分配した指標。WS/48はそれを48分換算したもの。

BPMとWSの詳細な計算式他詳しく知りたい方はこちら→BBRのBPM解説WS解説

キャリアBPMランキング。

プレイオフでのキャリアBPMランキング。

キャリアWS/48ランキング。

プレイオフでのキャリアWS/48ランキング。

ニコラ・ヨキッチがキャリアレギュラーシーズンBPMで歴代1位、プレイオフBPMで歴代4位、レギュラーシーズンWS/48で歴代4位、プレイオフ歴代4位。

これらの順位・指標だけを根拠に「ヨキッチは歴代1位or4位の選手」と主張する人は流石にいないでしょう。熱心なヨキッチファンである私だって当然しません。

総合指標に限らず、キャリアスタッツランキングというのは現役選手、とりわけ全盛期中の選手やキャリア晩年を迎えていない選手に有利に働きます。大体の選手がキャリア後期になるほど成績が下降していきますからね。

上記ランキング・指標自体を「ナンセンス」「過去レジェンドへのディスリスペクト」と捉えられる事もあります。(過去レジェンドたちと比べると)まだ若く実績も浅いヨキッチやヤニスが偉大なレジェンドを差し置いて上位にいる事、またそれを引用する事は非常に反感を買いやすいです。そんなつもりはなくとも、「ヨキッチは○○以上で歴代TOP5の選手」と主張しているように受け取られてしまう事があります。

ただ、少なくとも私が主張したいの全く別のことです。ヨキッチが類まれな活躍をして高数値を残しているのは事実ですが、だからこそレブロンやマイケル・ジョーダン(以下MJ)他レジェンドの偉大さが際立つんです。

まず、前述の通り、現在28歳で(恐らく)全盛期真っ最中のヨキッチと引退済みのMJ・(こちらも恐らく)キャリア最晩年のレブロンが同等のキャリアBPM・WS/48を記録している事は、「ヨキッチの優秀さ」と共に「MJとレブロンのピークの高さと長さ」をヤバいほど表しているんです。

歴代シングルシーズンキャリアBPMランキング。

TOP40の内、MJが8シーズン、レブロンが5シーズンを占めています。

レブロンの一部キャリアスタッツ一覧。右端列がBPM。黒太字はリーグ1位の数値。

MJの一部キャリアスタッツ一覧。

ヨキッチの一部キャリアスタッツ一覧。

レブロンもMJも30歳を過ぎてからも8~9の高数値。MJはウィザーズでの38歳と39歳のシーズンを含み、レブロンも38歳まで現役を続けた上での歴代TOP3のキャリアBPM。

BPMはあくまでボックススコアを基にした指標でしかありませんし留意点も多くありますが、レブロン・MJにしろ誰にしろ、他と比べ突出している事は素晴らしく、また面白いんです。

シングルシーズンプレイオフBPMランキングとなると2009レブロンはぶっちぎりの歴代1位です。

シングルシーズンプレイオフでの数値はサンプルサイズが小さいものも多いので、であまり信頼性は高くないです。ただ2009年レブロンは14試合プレイしての17.53なので、やはりヤバいです。

にもかかわらずキャバリアーズでは優勝出来なかった事を、後の“The Decision”の伏線と妄想する事も可能です。

オールラウンダーとして見られることは少ないMJがプレイオフキャリアBPMで歴代1位な理由を探ると、とんでもない数字に出くわしたりもします。

NBAファイナルでの平均スタッツ。
他チームファンとして心底イヤな選手でした。数少ない日本NBAメディアもMJ・ブルズ(とレイカーズ)ばっかり取り上げるもんだから、わたくし尚更八つ当たりしてました。

ついでに、シングルシーズンでの影響指標RAPTOR WARランキング。2014~2023対象(2013以前はないので)。

大体の影響指標はon/offスタッツ(その選手がコートにいる時といない時のチームスタッツの差)を重視しています。

シングルシーズンでの影響指標LEBRON WARランキング。2014~2023対象。

「1つの数字で選手の能力・出来を表そう」という意図は同じでも、総合指標・影響指標によって多くの違いがあります。

その違いや数値が「何によってもたらされているのか」を探る行為は、選手の長所短所・新しい見所・好きな選手の発見に繋がります。

数値・順位の高さに違和感を覚える選手も多いと思いますが、それもまた「選手に興味を持つ良いキッカケ」です。「リバウンドの多さで膨らんでいる」とか「ベンチプレイヤーは過大評価される」といった単純な理由だけではない複雑さと面白さが必ずあります。

私は「あらゆるスタッツ/指標はコンテキストが大事で、多角的に用いることが求められます。」と書きましたが、そんな堅苦しい事言わず好きに楽しむ事だってファンにとっては大事です。小難しいスタッツや指標が嫌いなら嫌いで、それもまた自由です。

ただ好きになると、NBAへの好奇心や関心を深める呼び水となり得ます。私は各種スタッツ・指標を選手の評価にそのまま繋げる事はまずありませんが、先日の記事で取り上げたNBA2Kでのレーティングですら、見てて「面白いな」と思うことは沢山あります。

ヤニスのNBA2Kでのレーティング推移。引用元:HoopsHype

どんだけ伸びるねん。

NBA2K23でのスピードランキング。引用元:HoopsHype

1. De’Aaron Fox 

Speed: 97 / Speed with the ball: 97 / OVR: 97

2. Russell Westbrook 

Speed: 96 / Speed with the ball: 95 / OVR: 95.5

3. Ja Morant

Speed: 94 / Speed with the ball: 94 / OVR: 94

4. Jaden Ivey

Speed: 92 / Speed with the ball: 92 / OVR: 92

5. Keon Johnson

Speed: 97 / Speed with the ball: 84 / OVR: 90.5

6. Donovan Mitchell

Speed: 96 / Speed with the ball: 83 / OVR: 89.5

7. RJ Hampton

Speed: 90 / Speed with the ball: 88 / OVR: 89

7. Derrick White

Speed: 90 / Speed with the ball: 88 / OVR: 89

9. Daishen Nix

Speed: 90 / Speed with the ball: 87 / OVR: 88.5

10. Ben Simmons

Speed: 92 / Speed with the ball: 84 / OVR: 88

アリーナに設置された高性能カメラで実際に測定された2023シーズン平均スピードランキング。58試合出場選手対象。

NBA2Kでのスピードの数値は主にTOPスピードや一歩目の速さを基にしているのだと思いますが、2023シーズン実際にコート上で一番速く動き回っていたのはTJ・マッコネルでした。平均スピードで言うと。

2021/3/3の対キャバリアーズ戦で記録した10スティールを含んだトリプルダブル。ホゼ・アルバラードが“ニンジャスティール”なら、さしずめこちらは“海賊スティール”です。

本記事冒頭の「プラスマイナス」に始まり、「コート上の平均スピード」というマイナーなスタッツにまで話が広がっちゃうのもスタッツ・指標の魅力であり困ったところです。

これ以上記事を冗長にするのは気が引けますので、

今回はこの辺で。ではまた。

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