はじめに
昨季長期欠場を余儀なくされた選手たちに焦点を当てて、軽く語ろうと思います。
今回はロサンゼルス・クリッパーズのカワイ・レナード。
怪我をする前の活躍
これまでの受賞歴は2度のFMVP、2度のDPOY、3度のAll-NBA-1st、2度のAll-NBA-2nd、3度のAll-Def-1st、NBA 75th Anniversary Team等々。
史上でも屈指の攻守兼ね備えたウィング/フォワードです。シーズンMVPこそ受賞してませんがMVP Award Shares(これまでに得たMVPの得票率)では1.160と満票1回分を上回る数字。
たとえ今すぐに引退したとしても間違いなく“勝者”です。ターミネーターですから当分引退しないでしょうが。
スパーズとラプターズで優勝&FMVPを経験した後’20にクリッパーズでポール・ジョージとスターデュオを組み、その時は「もはやLAの主役はレイカーズではない」なんて声も一部上がっていました。クリッパーズは西2位でOFFRTG/DEFRTG/NETRTGすべて5位以内とカワイさながらのバランスの良さで、プレイオフではレイカーズとのダービーマッチを期待してるNBAファンは多かったと思います。
ところがセミファイナルでナゲッツにまさかの大逆転負け。カワイ自身も第7戦はFG6/22で14得点のみ。敗退後はポール・ジョージが取り沙汰される事が多かったですが、カワイも相当悔しかったでしょう。
ただコート上ではあまり感情を出さず虎視眈々としているのがカワイの魅力の一つ。
プレイオフでも対マーベリックス2勝3敗で追い詰められた第6戦、FG18/25で45得点の大活躍。特に残り2分近くでの2本のステップバック3を見た時は「おかえりなさい」って気分になりました。
第7戦も勝利し無事1回戦突破するも、セミファイナル第4戦後に「ACL injury(前十字靭帯損傷)」との報道が出ました。
初報が出た時点で選手たちからも同情の声が挙がっていましたが、いまいち状況がはっきりしなくてtear(断裂)なのかstretched(伸びただけ)なのかがよくわからず、結局完全断裂ではなかったものの回復までのプロセスはそれと変わらず次シーズン含め全休。
怪我はいつだって嫌ですが、直前まで獅子奮迅の活躍をしていたのもあって、あの時の空気感は本当にモヤモヤしてて嫌でした。
’22のクリッパーズはカワイ全休、ポール・ジョージも長期欠場と2枚看板が共に不在の試合が多かったにもかかわらず悲壮感はそんなになかったように思います。
タイ・ルーHCのローテーション・モチベーション管理は見事で、試合後の記者会見では選手たちから度々称賛の声が聞かれました。試合内容もバウンスバックだったり面白いものが多かったです。
1月の対ウィザーズ戦では35点差を覆す歴史的大逆転劇。ケナードの終了間際の4点プレーは驚きでした。
仲間たちの奮闘と成長は、不謹慎ではありますが怪我の功名と言っていいのかもしれません。
’23への期待
’22オフの動きですと、アイザイア・ハーテンシュタインの移籍は残念ですが“ビッグ・ガバメント”ことレジー・ジャクソン始め前述の苦しいシーズンを乗り切った頼れる仲間たちやジョン・ウォールなど新加入組もいます。
昨季プレイオフを逃したにもかかわらず来季クリッパーズを優勝候補とみなす人は非常に多いです。それだけの層の厚さがあります。
層の厚さはチームの完成度だけでなく病み上がりのカワイにとっても非常に有難いでしょう。カワイも31歳ですし元々メンテナンスに気を遣うサイボーグですからね。
カワイはNBA入り前のNBA DRAFT NETでは「ジャンプショットが非常に不安定」なんて言われていたのに、今やリーグ屈指のプルアップシューターでもあります。すぐに元通りとはいかずとも、また我々が驚く回復や成長を見せてくれるかもしれません。
“蟹も飛べるのか、そう思ったら、涙が出た”とは太宰治のエッセイにある一節ですが、“カワイも笑うのか、そう思ったら、涙が出た”なんて日が来てほしいです。
いや、カワイめっちゃ笑ってますけども。
今回の【’23スターたちの帰還】はここまで。ではまた次回。