【NBA2023プレイオフ】悲願のNBAファイナル進出の懸かった名勝負。数字とリードトラッカーで考えるデンバー・ナゲッツの勝負強さ。レブロンとADに次ぐ八村塁とリーブスのスタッツ群と笑顔。/取扱注意な「クラッチスタッツ」/レイカーズ、マイアミ・ヒート、セルティックス
本日2023/5/23の試合結果。
ナゲッツがレイカーズを4勝0敗で下し、フランチャイズ史上初のNBAファイナル進出。プレイオフシリーズでのスイープも初。プレイオフシリーズでレイカーズを破るのも初。
良い試合でした。勝負事ですから、当然そこには優劣や出来・不出来が存在します。
しかし、本試合では「劣ったディフェンスに対する優れたオフェンス」ではなく「優れたディフェンスに対する更に優れたオフェンス」が多く存在しました。
スイープという結果はしばしば嘲笑の対象となりますが、本シリーズのレイカーズには全く当てはまらないと思います。
繰り返しになりますが、レイカーズのディフェンスは依然エリートでした。アンソニー・デイビスはヨキッチとナゲッツに対して出来得る限りのディフェンスをしていました。(3秒の多さを鑑みても)
不安定だったADのシュートタッチは、単にスキルやメンタルの問題ではなく、レイカーズのリムプロテクトやリバウンド、特に本シリーズではヨキッチをケアし続けた重責・消耗から来たものではないかと私は思っています。
そして、右足の怪我を抱え続けながらのプレイオフラン。負けたら終わりの重圧の中、前半だけで31得点、トータル40得点を挙げたレブロン。
ADと八村塁とレブロン、今日の試合ではトリスタン・トンプソンまで引っ張り出してヨキッチ対策を諦めなかったダービン・ハムHCも称賛に値します。私には何が最善の策だったかはわかりませんが、本当に見応えのある攻防が多く生まれました。
八村塁、オースティン・リーブスは本シリーズで間違いなく評価を上げたでしょう。
リーブスは2年目とは言え、昨季の苦しい時期を乗り越えた、現レイカーズの中では“古参”とも言え、非常に頼れる存在でした。タフショットを決めた回数ならレイカーズで一番だったかも知れません。
八村塁は本試合こそ振るいませんでしたが、シリーズ平均15.3PPG、FG53.3%、3P33.3%、FT100%は紛れもなく素晴らしい貢献です。レギュラーシーズン平均出場時間22.4分から33.5分へと大きく出番を増やしての飛躍、何よりプレッシャーのかかるであろう大舞台で笑顔を見せてくれた事が本当に嬉しかったです。
そして、そのレイカーズを破ったデンバー・ナゲッツ。
ただただ美しく逆境に負けないタフなバスケットボールをするNBA2023ウェスタン・カンファレンス最強のチーム。
初のファイナル進出。まだ大きな仕事が残っているとはいえ、NBAファイナルまで1週間以上も時間が空きますし、少しくらい感傷的になってもバチは当たらないでしょう。
2021シーズンのジャマール・マレーの前十字靭帯以降の年月は、想像を絶する苦労と闘いがあったと思います。
マレーの離脱タイミングはレギュラーシーズン終盤で最悪とも言える時期でした。アーロン・ゴードンが加入し好調の矢先でしたし、負担の増加からかモンテ・モリス、PJ・ドージャー、ウィル・バートンらの負傷にも繋がりました。
2022はマイケル・ポーターJrが9試合出場後に全休。期待が高かった分、周りからは復帰を急かすような声も生まれ、それでもマレーと共に「万全な状態での復活こそがチームのため」と我慢とリハビリを続けた日々は想像以上に辛かったでしょう。
祝うべき時に湿っぽくなるのもアレなので、これ以上詳しくは述べませんが、「バスケをプレイする」以上の大変さがこの2年間には詰まっていたと思います。
一人のプロスポーツファンとして、それが報われて本当に嬉しいです。前述の通り、まだ大きな仕事が残っていますが、結果がどうあれ今季大きな前進を果たしたことは変わらないでしょう。
ひとまず、
おめでとう!デンバーナゲッツ!
・・・・・で、少しナゲッツの興味深いスタッツについて。
今季2023プレイオフでのナゲッツは兎に角逆境・クラッチに強いです。特にレイカーズとのシリーズではそれが目立ちました。
今季2023プレイオフのクラッチスタッツ一覧(残り5分以内で5点差以内の時間帯があった試合のスタッツ、要は終盤接戦時のスタッツです)。2023/5/23時点。
今季2023プレイオフのナゲッツのゲームログ。
クラッチシチュエーションに強い以外にも、「劣勢を覆す・逆境に強い」という特徴もあります。今日の試合も最大15点差、ヨキッチの5ファウルを跳ね除けての勝利でした。
今日の試合のリードトラッカ―。
第2戦のリードトラッカ―。
第3戦のリードトラッカ―。
前回カンファレンスファイナルまで進出した2020シーズンも、2度も1勝3敗を覆す快挙を成し遂げましたけど、これって「勝負強い」の一言で片づけられない面白い事実が隠されてそうですよね。
私は「ナゲッツのボール&オフボールムーブメントの非常に多いオフェンスが試合終盤やシリーズ終盤に相手のスタミナ切れを誘発している」ってのが一因としてあるのかな、と現時点では漠然と考えています。
数字的な裏付けは何もないですし、妄想して楽しんでるってだけです。けど、そう考えると全ての動き、例え得点に繋がらずとも全ての選手が無駄にならず勝利に貢献しているようで何だか感慨深いです。
・・・・・そうです、全ての選手です。
今日の試合後、ジャマール・マレーの記者会見での御言葉。
ここにいたコアメンバーたちは素晴らしかった。
僕らがカルチャーを築き始めた時にいた選手たち。
ゲイリー・ハリス、ポール・ミルサップ、モンテ・モリス。
彼らは皆そのカルチャーを体現していた。
・・・・・・・マレー・・・・・・ほんと・・・・・そんな事言われたら・・・・・・
何はともあれ
レイカーズお疲れ様でした。色々ありましたが素晴らしいシーズンだったと思います。ありがとう。
ナゲッツはおめでとう。悲願の初優勝に向けてしっかり英気を養って下され。
今回はこの辺で。ではまた。
おまけ。
今季2023レギュラーシーズンのクラッチNetRtgランキング。
クラッチスタッツは「勝負強さを計る物差し」として用いられる事が多いですけど、多くの留意点を抱えています。
まず、その性質上サンプルサイズは小さくなり、対戦相手の違いは大きくなり、別々の選手・チームを同一条件で比較する事が難しいです。
加えて、切り取るスタッツや範囲で容易に印象操作も可能です。
少し例をあげますと
そもそも「クラッチスタッツ=接戦でのスタッツ」なので、「クラッチでの得点の多い選手=それだけ頻繁に追い込まれてる」「クラッチでの得点の少ない選手=接戦に持ち込まれる事なく終盤に突き放す」といったケースもあります。
クラッチスタッツが「残り5分、5点差以内でのスタッツ」と公式に定義される以前、マイケル・ジョーダンやラリー・バードが「史上屈指のクラッチプレイヤー」としての評価を得ていたのは「残り5分、5点差以内でのスタッツ」が優れていたからではありません。ゲームウィナー以外にアイテスト、ファイナルやエリミネーションゲームでのプレイに拠る所も大きいんです。
「勝負強さ」という曖昧になりがちな評価カテゴリで、「クラッチスタッツ」はある程度有用でありますけど、誤解を招きやすくアイテストとの乖離も大きい、取扱注意なスタッツだと思います。
・・・・・・書き始めたら、思ったより長くなりそうになっちゃいました。時間がないので続きは近いうちに別の記事ででも。中途半端で申し訳ない。ではまた。