【2023NBAファイナル】やっぱり歴史を作るヨキッチとジャマール・マレー。突如現れた、もう一人の2023No.1ルーキー。デンバー・ナゲッツとマイアミ・ヒート、全選手がカルチャーを体現し“主役”となり得る両チームは新たなNBAの潮流に?
本日2023/6/08の試合結果。
2023NBAファイナル第3戦はナゲッツが勝利。2勝1敗とし、リードとホームコートアドバンテージを取り戻しました。
まずは何と言ってもニコラ・ヨキッチ&ジャマール・マレー。
両選手揃って30得点以上のトリプルダブル。
チームメイト同士が同時にトリプルダブルを記録するのはファイナル史上初。
両選手とも30得点以上のトリプルダブルなのはレギュラーシーズン含めNBA史上初。
NBAファイナル史上、30得点以上のトリプルダブルを記録したのは8選手のみ。その内の2人が同チームで、同試合で記録。その内の1人は対戦相手のジミー・バトラー。
ヨキッチの30pts20reb10ast以上のスタッツラインもファイナル史上初。
プレイオフ史上30-20-10以上が記録されたのは5回。ヨキッチはその内の3回を占めています。
しかし、試合後のヨキッチはあくまでいつも通り。この歴史的スタッツについて聞かれても「正直言って、特に何も」と微笑みながら回答。(インタビュアーのリサ・ソルターズさんも「そう言うとわかっていました」と笑っておりました)
同時にマレーについては「彼は本当に良いリーダー。僕らはただ彼に従うんだ」と全幅の信頼を寄せています。
マレーはヨキッチについて「僕らは言える事が尽きてきた」とヨキッチの一貫したハイパフォーマンスを称賛。その関係性については「信頼と感覚。それが最も良く言い表せていると思う。戦術的なものじゃない。試合を読んで、相手が正しいプレイをすると信じているんだ」とコメント。リンク。
この試合2人合わせてFG24/43、3P4/8の66得点31reb20ast。効率と生産性を高いレベルで両立した、正に歴史的パフォーマンスでした。
そして、もう一人。絶対に言及せなばならない選手がいますね?
クリスチャン・ブラウン。(以下CB)
本試合19分の出場でFG7/8の15得点。ハッスル付き。
CBは21位指名のルーキーです。華やかなスキルセットではなくタフなディフェンスとハッスル、アンセルフィッシュに貢献をする、まさに“ナゲッツの選手”。
平均出場時間は20分未満ですが、対戦相手・試合によって出場時間のブレが大きいのも特徴の一つです。
レイカーズとのシリーズでは殆ど出番がなかったにもかかわらず、ファイナルの大舞台での大活躍。ルーキーでありながら常に集中力を維持し、準備を怠らない姿勢は流石のNCAAチャンピオンです。
ヨキッチとマレー2人合わせたスタッツを紹介しましたが
ヒートのスターター5人全員合わせた数字はFG23/67、3P5/19の66得点25reb12astで、ヨキッチ&マレー2人とほぼ同じ生産量でした。効率を落としながら。
ジミー・バトラーとバム・アデバヨの2人を合わせた数字はFG18/45、3P1/4の50得点。スターターで2桁得点をしたのは、この2人のみ。ベンチ含めてもケイレブ・マーティン10得点を加えた3人。
ジミーとアデバヨ2人でチーム全体の約半数の得点とFGAを記録してます。それ自体は悪くないと思います。ヒートはガッツ溢れる良い選手揃いですが、チームの中心を聞かれればそれは間違いなくジミーとアデバヨです。この二人がシュートに積極的なのは良い事です。
ただ、ナゲッツとの相性が悪いです。
ジミーとアデバヨにはほぼ3Pがありません。
ジミーは今季プレイオフでレギュラーシーズンよりも3P%と試投数を上げていますが、それでも35.7%と1試合平均1.3程度の成功数。ジミーの高効率スコアリングはフリースローによる部分も大きいです。
しかし、セルティックスとのシリーズ以降、相手にポンプフェイクが露骨に警戒されてFTAは下がり、自然とPPGと効率も下がっています。
アデバヨはビッグマンとして非常に素晴らしいミッドレンジジャンパーを持っていますが、それだけにフリースローを得る事は少なく3Pは皆無。
対するナゲッツというかヨキッチ&マレーから始まるオフェンスは効率お化けです。
ナゲッツのスターターで3Pを打てない選手はいません。今プレイオフで最も3P%の低いナゲッツスターターはマイケル・ポーターJrの36.9%です。(ファイナル3試合で3/19と大きく数字を落としてもこの数値)
恐ろしいのが、ナゲッツオフェンスはその3Pに然程依存していない事です。相手ディフェンスを読んで高効率な選択肢を選べるところです。ヒートが破ったセルティックスとの違いでもあります。
ナゲッツは守って勝つのが非常に難しいです。オフェンスでも高効率であることが求められます。
ヒートはフリースローの減ったジミーとアデバヨのミッドレンジスコアリングを中心にしてナゲッツと打ち合いをするのは極めて分が悪いです。ジミーとアデバヨが悪いのではなく、ヨキッチ&マレーによるプレイメイキングはそれほどズバ抜けています。
今季2023プレイオフ、5ラインナップOffRtgランキング(雑に言うと「オフェンスが強力な5人組ランキング」です)。100ポゼッション以上対象。2023/6/8時点。
本記事をここまで読んで「いや、けどナゲッツ第2戦で負けとるがな」と御思いの方。
第2戦、ヒートはジミーとアデバヨが積極的になりながらも得点やFGAは満遍なくありました。ジミーの9ast含むチームトータルで28ast。(今日の試合は20ast)
3Pを17/35の48.6%の高確率で決めた事は間違いなく大きな勝因の一つと言えますが、攻守オン&オフボールの動きの多さ、ボールムーブメントの多さ、変幻自在なディフェンシブスキームでナゲッツに混乱・ファウル・ミス・スタミナの浪費を強いた事も大きな要因です。
もしも、ジミーが対バックスでの高効率56得点を再現できるのなら話は別ですが、そうでないなら多くの選手が多くのポゼッションに関わるオフェンス、3P・ダイブカット・フリースローを多く生むのがヒートのスタートラインかなと思います。
・・・・・・・・まぁ私、第2戦の前は「ヒートはジミーが活躍してスタートライン」と言ってたんですけどね。
言い訳させてもらうと、私は無意識のうちにジミー以外の面々を侮っていたと思います。「ジミーの活躍が大事」という考え自体は今も変わっていませんが、ヒートは誰でもスコアリングの中心になれると今は思っております。そう思わされました。第2戦やシュートの入らなかった今日の試合ですら。
俺は彼らを「ロールプレイヤー」とは呼ばない。「チームメイト」と呼ぶ。
とジミーが言っていた通りです。彼らはいつでも主役になれるでしょう。少なくとも、その気概は間違いなく示しています。
正直言うと、まだちょっぴり「またジミーの怪物パフォーマンスを見たい」って気持ちもあります。バスケはチームスポーツですけど、「ジミーvsヨキッチ(マレーでも可)」のマンマッチ・点取り合戦みたいなのも、それはそれで絶対燃えますからね。
第3戦が終わった段階で迂闊な事を言うと、また馬鹿を見るかもしれませんが、今季のファイナルはドラフト外の選手や下位指名選手含めた全選手がそれぞれのチームカルチャーを体現している史上屈指の好カードで、もっと言うと今季のプレイオフは新しいヒーローやスターのカムバックが沢山生まれた、本当に良いプレイオフだと感じます。
毎年言ってますけどね。
今回はこの辺で。ではまた。
おまけ。
全デンバーが泣いた。昨季までナゲッツにいたモンテ・モリスとヨキッチが試合後に熱い抱擁。
あと冒頭で載せたこの画像↓。
見た瞬間コレ↓を思い出した。