NBAオンコートネットレーティングとオン/オフ ディファレンシャルTOP20ランキングと注目選手とそれらについての概論。/レブロン、ステフィン・カリー、ヤニス、ヨキッチ、ドンチッチ、ジャ・モラントetc.
以前+/-プラスマイナスについての記事を書きました↓。
今回は100ポゼッションあたりでのプラスマイナス、つまりNet Ratingネットレーティング(以下NetRtg)について。
それとon/off ディファレンシャル(※)について。
※:on/off differential。NetRtg swingとも言います。その選手がコートにいる時のNetRtg(オンコートNetRtg)といない時のNetRtgの差。
1位ヨキッチの数値で説明しますと、ヨキッチのon/off ディファレンシャルは28.3。つまりナゲッツはヨキッチがコートにいる時といない時では100ポゼッションあたりで28.3点も得失点差に違いがあるという事です。
もう少し詳しく書きますと、ヨキッチのオンコートNetRtgは12.3。つまりヨキッチはコートにいる時100ポゼッションあたり12.3点のリードをナゲッツにもたらしています。on/off ディファレンシャルが28.3という事は、ヨキッチがコートにいない時100ポゼッションあたり16.0点もナゲッツはリードを奪われているという事になります。
選手がコートにいる時いない時のチームスタッツの差を総称してon/off statsと呼び、選手の影響力を計る際によく用いられます。LEBRONやRAPTORのような影響指標もon/off statsが考慮されています。
Basketball Reference(以下BBR)による2022/11/21時点での’23オンコートNet Rtgランキングは以下。
次は2022/11/21時点での’23on/off ディファレンシャルランキング。
ついでに昨季’22オンコートNet Rtgランキング。
昨季’22on/off ディファレンシャル ランキング。
オンコートNetRtgは+/-プラスマイナスと同じくチームメイトにも依存するスタッツ/指標なので、「オンコートNetRtgが大したことないから、この選手は大したこない」って単純なものではないです。on/off ディファレンシャルも似たようなもんです。
「じゃあこのスタッツ/指標は何のためにあるの?このスタッツから何がわかるの?」
って話ですが、それは人によって様々で、アナリストによっても違います。
私の見解を超ざっくり書きますと
オンコートNet Rtgは「その選手がコートにいる時、どの程度効果的にチームが機能しているか」を推し量るのに適しているスタッツ。
on/off ディファレンシャルは「その選手がチームにおいて、どういった影響力を持っているか」を推し量るのに適しているスタッツ。
となります。
今季はまだサンプルサイズが小さいですが、それでも今後が楽しみな名前が並んでいてワクワクさせられます。
本記事で取り上げたいのは’23オンコートNet Rtgランキング1位サム・ハウザー、5位ジョック・ランデール、13位ジョシュ・グリーンの3人。
3人の今季’23スタッツ一覧。2022/11/21時点。※画像クリックで拡大
3人共セカンドユニットで平均出場時間も20分未満ですから、スタッツボリュームは多くはありません。
ただ、見ていてわかりやすい魅力を持っている選手達だと思います。
サム・ハウザーはセルティックスの3P%47.9%の3Pシューター。
私も最近注目し始めたので詳しいことは言えませんが、佇まいがまさしく仕事人って感じです。全FGM43本中42本がアシストされてのもので、その内35本が3P。ハーフコートでもトランジッションでもシューターとしているべき場所にススッと足を運んで、パッと打って、またススッとディフェンスに戻る姿が仕事人。
ピストンズ戦だったかで見せた笑顔が思いのほか幼く見えて、それもまた良い感じでした。
ジョック・ランデールはサンズのバックアップセンター。
ジャベール・マギーが去りクラウダ―も未プレイなどなど苦難の続くサンズにおいての癒し(私にとっての)。
東京五輪でオーストラリア代表として来日。私はブーマーズ(オーストラリア代表の愛称)が大好きなのでその時から注目していましたが、代表時とNBA時でその“暑苦しさ”は変わっていません。昨季スパーズにいた時は一時3P%が5割近くにもなっていて、「これは・・・・ブレイク待ったなし!」と思ったんですがそうもいかず。今季またサンズで暑苦しさを披露してくれているのは嬉しい限りです。
・・・・ビヨンボも大好きなのでどうにか共存できないかな。
ジョシュ・グリーンはマーベリックスのウィング。ジョック・ランデールと同じくブーマーズの一員です。
絵に描いたようなエナジーガイ。攻守で一生懸命よう走ります。今季で3年目、相変わらずシュートに関しては遠慮がちな面も見られますが、2022/11/21の対ナゲッツ戦では3P6/7の23得点でキャリアハイ。
ドンチッチを筆頭にマブスはシュートを打つ人間が豊富ですから、FGAが少ないのは致し方ないんでしょうけど、キャッチ&シュートの精度や、その走力を活かしたトランジッションでの動きを増やせば、マブスのオフェンスに幅が出来てジョシュ・グリーンも飛躍してのwin-win。ついでに私もwinです。
とりあえず以上。
今回はこの辺で。ではまた。
以下オンコートNet Rtgとon/off ディファレンシャルについての補足と私見。
チームの根幹をなすような中心選手とロールプレーヤーではオンコートNet Rtg/on/off ディファレンシャルの捉え方に違いがあります。前述した通り、チームメイトにも大きく依存するスタッツなのでステフやヨキッチのような高い数値の選手と出場時間を多く共有する選手は皆必然的に数値が高くなりやすいです。
例えば今季ケボン・ルーニーはステフよりも高いon/off ディファレンシャルを記録しています。だからといって「ルーニーはステフより大きな影響力を持っている」とは思えません。「ステフ並びにステフ中心のシステムと相性が良いんだな」というような感想が出てきます。
また、on/off ディファレンシャルは「コートにいない時間の成績にも大きく左右される」という点にも留意が必要です。
例えば昨季フェニックス・サンズは層が厚く、ベンチユニットが主だって出場する時間帯でも相手に優位を奪われる事はあまりありませんでした。なのでデビン・ブッカーらサンズの中心選手はオンコートNetRtgは高い数値を記録していますがon/off ディファレンシャルでは然程です。こういった場合、ブッカーらを「影響力が小さい」と見なすことは私には出来ません。「’22サンズは優秀なセカンドユニット並びに選手起用やシステムを持っていた」と捉えます。雑に言えば。
昨季’22のジャ・モラントやルカ・ドンチッチにも似たような事が言えます。昨季二人ともon/off ディファレンシャルは高いとは言えません。ジャにいたってはマイナスで、不在時のチーム成績が20勝5敗と優秀な事も度々取り沙汰されました。
「じゃあドンチッチはマーべリックスに然程好影響を与えていないのか。ジャはグリズリーズに良くない影響を与えていたのか」と言えば、答えは断じてNOです。
二人ともブッカーらと同じ様にオンコートNetRtgではプラスを記録していたんです。その間二人とも高いUSG%やAST%を記録しオフェンスにおいて大きな役割を担ってもいました。
コートにいる間大きな役割を担っていたから、不在時に他のメンバーがスタミナ切れを起こす事もなく自身の仕事に注力出来て、なおかつオフェンスに変化が生まれ、相手からアドバンテージが取りやすくなる。そういった事もあるでしょう。
ドンチッチとジャがオンコートNetRtgでマイナスを記録しているならまだしも、プラスである以上彼らをネガティブな影響を持っていると見なす事は出来ませんし、彼らのon/off ディファレンシャルが低いことは「彼らのチームは層が厚い、もしくは優秀なセカンドユニット、システムを持っている事の表れではないか」と私は見なしています。
それに加え、セカンドユニットの選手は当然ながら相手セカンドユニットと対峙する事が殆どです。ジャのグリズリーズやドンチッチのマーベリックスは、彼らが不在時にも相手セカンドユニットからリードを奪える優秀なセカンドユニット/ラインナップだと思いますが、同じことを相手スターターに一貫して出来るかは疑わしいです。(不在時にプレイオフで勝利はしていますけども、1勝と2勝のみです)
ここまで読んで「じゃあ結局on/off ディファレンシャルは何のためにあるの?このスタッツから何がわかるの?」って疑問が再度湧くかもしれません。
説教臭い&毎度しつこくて申し訳ありませんが、
あらゆるスタッツ/指標はコンテキストが大事で、多角的に用いることが求められます。
on/off ディファレンシャルだけで意味のある答えを出すのは無謀です。ただし、だからと言ってon/off ディファレンシャルが無意味なスタッツだと言う事ではありません。短絡的に用いることが無謀なのはあらゆるスタッツに言える事です。FG%やPPG、TS%、総合指標だろうが私はそう思っています。(※)
※:ただ、これもしつこく言っていますが、楽しむだけが目的なら一々堅苦しい事を考える必要はないと思います。私もシンプルに楽しむ事は沢山ありますし、他人が喜んだり楽しんでるスタッツに「いやコンテキストが云々、多角的に云々」などと水を差すのは無粋も無粋だと思います。
この記事自体が無粋に思われる方もいるかもしれませんが、「スタッツ/指標には色々種類があって、こういう楽しみ方もありますよ」という紹介程度に思って頂ければ幸いです。
“Play by Play Data ”の計測が可能になった1997年以降の偉大なレジェンドたち、MVPたちを見るとon/off ディファレンシャルにも優れている選手が殆どです。
マイケル・ジョーダン。
レブロン・ジェームズ。
ステフィン・カリー。
ヤニス・アデトクンボ。
ニコラ・ヨキッチ。
近年“Play by Play Data ”「詳細な試合データ」の取得が容易になり、スタッツ/指標の数が増え、従来慣れ親しんできたPerGameスタッツのようなカウント統計は相対的に評価されにくくなってきています。(あくまで“今までと比べて相対的に”です。アワード投票権を持つようなアナリストや記者はそういった事も考慮して総合的に判断して選手を評価しています。少なくとも私が好む方たちは)
今回紹介したon/off ディファレンシャルや影響指標というのは、いわゆる「チームを勝たせているか」「チームに有利を与えているか」を表したスタッツ/指標とも言えます。しかし「選手の技術レベルの高さ」「能力の高さ」を表しているわけではありません。同じ選手が所属チーム/システム/コーチを変える事で数値が大きく変動する事もままあります。
ですので「新しいスタッツ/指標の方が重要で、古いものは不必要」ってことでもないです。両方大事で、同時に興味ない方からすれば無粋な横やりにもなり得ます。
ただ色々知っておくと選手を評価する方法に幅が出て色々便利って感じです。
改めまして、今回はこの辺で。ではまた。
以下はon/off ディファレンシャルについて、さらに知りたい方のためのおまけのおまけ。
ポゼッションやRtgやon/off ディファレンシャルには種類が複数あって、参照するサイトによって数値に違いがあったりもします。ただし「こっちが正しくて、あっちは間違っている」という事ではなく、サイトにより算出方法/計算式が違うというだけです。NBA.comでのポゼッション数の算出方法は実測値だと言われています(計算式を載せていないため)。
一方BBRはディーン・オリバーが開発した計算式を用いています(膨大なサンプルデータを基に開発された計算式です、NBA.comとの数値に若干の違いは出ますが各チーム/選手間の差にはほぼ違いが見られない事から極めて優秀な計算式とされています)。
BBRは選手個人ページPer 100 Possの項にORtgとDRtgを載せていますが、これは通常用いられるオンコートOffRtgやオンコートDefRtgとは別物なので気を付けましょう。
これらはIndividual Offensive RatingとIndividual Defensive Rating呼ばれるもので、使われる事はほぼありません。よそでOffRtgとだけ記載されてる場合は大抵オンコートOffRtgの事です。
最近はデータサイト“Cleaning the Glass”による、勝敗に影響しないガベージタイムでの数値を省いたRtgやon/off ディファレンシャルが人気で、よく使われている印象です。Cleaning the Glassへのリンク
Cleaning the Glassによる今季on/off ディファレンシャル ランキング。
ランキング上位選手たちのon/offスタッツ一覧。※画像クリックで拡大
ここまで長々と御託を並べましたが、結局のところ「on/off ディファレンシャルとは何ぞや?」の質問にズバリと簡潔に答える事は出来ないのです。大抵のスタッツ/指標についてもそうです。
ただ繰り返しになりますが、色々なスタッツ/指標、それを扱うサイト/アナリスト/記者を知っておくと好きな選手・気になる選手が増え、見たい試合・楽しめる試合も増えて色々とお得です。私のような暇人にとっては特に。
スタッツ/指標の知識は必須でも何でもないですけど、楽しいです。オフシーズンや隙間時間のヒマ潰しにもってこいです。
当ブログが皆様のヒマ潰しの一助にでもなれたなら幸いです。今回はこの辺で。ではまた。
機会があれば“ラインアップ スタッツ”についての記事も作れたらと思っております。
追記:書きました↓。