NBA歴代&現役対象±ランキングとNBAファイナルでの±ランキングと±系スタッツの留意点その他色々。
現代は我々一般人でも詳細なスタッツ・データへのアクセスが容易になりました。
需要が高まるとともに供給も増えまして、Synergy Sportsといったプロを対象にしたデータサイトにもお金さえ払えばアクセス可能です。
NBA公式も一部スタッツの計測はSecond Spectrumという外部のデータ分析組織を頼りにしています。
しかし私にとってはありがたい時代ですけども、選手にとっては些か“やりづらい”時代なのかもしれません。
過去のデータへのアクセスも容易になった事で、一種のデジタル・タトゥーと言いますか、過去の不出来や不名誉なデータも頻繁に持ち出されます。他ならぬ当ブログ含め。
で、昨日2024/6/15の衝撃的な試合結果↓を受けて、また色々と不名誉な記録が取り沙汰されております。
とんでもねー大差の試合だったので、±(プラスマイナス)系のスタッツは大きく変動しました。サンプルサイズが少ないと各種レーティングなど平均スタッツは1試合の影響がデカくなります。シリーズ全体では3勝1敗とセルティックスが明らかに優勢でも、±や各種レーティングではマーベリックスが優勢に見える事態となりました。
単一の試合での±や小さいサンプルサイズでのレーティングが選手・チーム評価にはまるっきり向いていない事の良い例です。(マーベリックスの勝利に水を差すようで申しわけない)
まず単一の試合の±が選手の評価に向いていない理由の一つは「チームメイト等その選手の活躍以外の影響を大いに受ける」からです。
チームメイトが大活躍してA選手が足を引っ張っても、リードを奪えばA選手の±は+になります。その逆もあります。A選手の活躍がそのまま±に反映される事だって勿論あります。様々なケースがありますので、結局は単一の試合で±を頼りに選手を評価するのは誤解の元です。アイテストや他スタッツを頼りにした方が余程無難です。
単一の試合で±が持ち出されるのは「けど±ではプラスだった」といった感じで“不出来だった選手へのフォロー”が多い印象ですが、私は「±はプラスだった。じゃあこの選手は良かったんだ」とはなりませんし、そういう風に考えを覆す方は多くないと思います。
「なら、そもそも±って何の役に立つの?」って話ですけど、私がある程度参考にするのは、長いスパンかつ大きなサンプルサイズでチームのシステムの根幹を成すような中心選手のトータル±です。
何故か。
まず前提として、スタッツやデータ(特に平均)は長いスパンかつ大きなサンプルサイズであるほど信用性が高まります(絶対ではないですし色々ややこしいんですけど省略)。
で、中心選手の長いスパンかつ大きなサンプルサイズの±は「その選手中心のシステムが上手くいっているか(チームに明確なリードを与えているか)を表している」と捉えられます。「その中心選手の影響力がどれくらいプラスに働いているか」と捉えられます。
ただし、長いスパンかつ大きなサンプルサイズでも「チームメイト等その選手の活躍以外の影響を大いに受ける」事は変わりません。なので、その中心選手以外のチームメイトの過去現在の±他各種データやロスターの変遷等も併せて調べる事が必要になります。
で、そうやって調べていくと、過去の偉大な選手たちは大抵±やオンコートNetRtg(言い換えると100ポゼッショあたりでの±です)、オンオフNetRtgで非常に優秀な数値を長期間にわたって残している事がわかります。
ここでミソなのは長期間にわたっての部分。
ステフィン・カリーは長期間にわたり±やオンコートNetRtgやオンオフNetRtgで極めて高い数値を記録していました。
歴代レギュラーシーズン通算±ランキング。以下全て2024/6/16時点。
ステフのこれまでのオンコート&オンオフNetRtg。
優勝する前からステフは超優秀な数値を残しています。
ただ2020シーズンだけを見ると超マイナス。というのも、開幕早々に手首を骨折して5試合しか出場していません。
なので、「2020シーズンは手首の怪我もあって良い影響を残せなかった」とは捉えられても、2020シーズンだけを見て「ステフの影響力は実は大したことない」とは言えません。
長いので省きますけど、レブロンや近年ではヨキッチも似たようなもんです。一時的に落ち込む事はあってもレブロンはチーㇺメイトを変えてもほぼ常に高い数値を記録してきました(最近は下降気味)。ヨキッチもジャマール・マレーやMPJ不在の年ですら高い数値を記録していました。
今のセルティックスの選手たちも同じです。昨日の試合でファイナルでのトータル±や各種レーティング他平均スタッツは大きく落ち込みましたが「2024NBAファイナル第4戦でのセルティックスの選手たちは酷い出来だった」とは言えても「NBAファイナルでのセルティックスは酷かった」とは言えません。(あくまでこれまでの話です。まだわかりませんので)
見方を変えるとステフやレブロンやヨキッチのチームメイトとなったロールプレイヤー(出場時間を多く共にするようになった選手)は途端に±やオンコートNetRtgが高くなったりします。
KCPのこれまでのオンコート&オンオフNetRtg。
なので私は中心選手以外の±は然程気にしません。“中心選手との相性の良さ”を推し量るのにある程度有用だとは思います。
スタッツもロールプレイヤーも適材適所です。±も使い方次第です。
最後に、くどいようですが何度でも言います。
あらゆるスタッツ/指標はコンテキストが大事で、多角的に用いることが求められます。
±だろーが何だろーが、それのみで選手を評価する事は出来ません。本来は公平正確に選手を評価しようと思ったのなら、それ相応のアイテスト・データ・見識を要します。
なので、お気に入りの選手の±が思ったより低くてもどうか気に病まずに。
「あらゆるスタッツ/指標はコンテキストが大事」云々も勝手に私が自戒している事であって、ファンは好きに楽しむのが一番です。「当ブログでは自戒の意味を込めて定期的に書いておきたい」ってだけです。私もあまり試合が観れなかった頃はコンテキスト云々抜きにして気軽に選手・チームのスタッツに一喜一憂してました。
いつもより文字数の多い記事になってしまいましたね。
これ以上余計な事を言う前に
今回はこの辺で。ではまた。
・・・・書いたそばからおまけ。
現役対象、レギュラーシーズン通算±ランキング。
「ロールプレイヤーの±は然程気にしない」と書きましたが、11位ダニー・グリーンはチームスタイルの違う様々な強豪チームから必要とされ、あらゆるスタープレイヤーとも見事にフィットをし高い通算±を残した「最高峰のロールプレイヤー」と言えます。
「ロールプレイヤー」という言葉は、「軽んじている」とか否定的な意味合いを見出される事もあるんですけども、私としましてはチームから求められた「ロール」(役割)を期待通り・期待以上に演じられるという意味で「良いロールプレイヤー」は非常に重要かつ貴重な存在と思っております。「スターは無条件にロールプレイヤーよりも上の存在」とは思っておりません。
なので良い選手を何でもかんでも「この選手は最早スター」みたいには呼ばないです。
ダニー・グリーンもKCPもデリック・ホワイトも「スター」じゃなくて、そこいらの「スター」以上に素晴らしい「ロールプレイヤー」と呼びたいのです。
ごめんよ、ジミー。
歴代NBAファイナル通算±ランキング。
マイケル・ジョーダンは30位。コービー・ブライアントは35位。26位リアンドロ・バルボサよりも下位です。
バルボサ最強。
・・・・・スタッツへの過信と慎重さのバランスは非常に難しいです。