【NBA】最も人気なスタッツ・指標と言えば?歴代TS%ランキング他各種シュート効率について。【NBAスタッツ・指標解説その1】/ステフィン・カリー、ゴベア、KD、リラード、ヤニス、エンビード、ヨキッチ、ウォリアーズ、ナゲッツ、サンズ、ウルブズ、ニックス

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【NBA】最も人気なスタッツ・指標と言えば?歴代キャリアPPGランキング、歴代TS%ランキング他各種シュート効率について。【NBAスタッツ・指標解説その1】

当ブログでは日々様々なスタッツ・指標を紹介しています。どのスタッツ・指標にも計算式があり、長所・短所・留意点とも言うべき特徴が存在していますが、スタッツ・指標の捉え方はケースバイケースであり、人によって解釈に違いも出て、そこが面白い部分でもあります。

しかし、記事内で引用するスタッツ・指標全てに計算式やその留意点・特徴を併記するとなると記事が非常に読み辛くなるため省略する事も多いです。

本記事では、普段当ブログで引用する事の多いスタッツ・指標の特徴や留意点を興味深いランキング・データも交えながら説明していこうと思います。

PPG/FG%/3P%/FT%

PPG/FG%/3P%/FT%、これらは特にポピュラーなスタッツです。

歴代キャリアPPGランキング。通算400試合もしくは通算10000得点以上選手対象(リーグ公式の規定数です)。

PPGは総得点を出場試合数で割った数字で「1試合あたりでの得点数」を表しており、FG%/3P%/FT%は成功数を試投数で割った数字で「シュートを成功させた確率」を表しています。

PPGとFG%/3P%/FT%を併記して「選手のスコアリング能力」が評価される事は多く、それが間違いとも言えませんが、気をつけたいのは“それぞれの試投数・試投割合”です。

毎試合15本FGを放っての30PPGと毎試合30本FGを放っての30PPGでは意味が違ってきます。

毎試合10本3Pを放っての3P40%と毎試合1本だけ3Pを放っての3P40%でも意味は違います。

2Pよりも成功率の低い傾向にある3Pを多く放つ選手はFG%も自ずと低くなる傾向にあるので、選手のFG効率を調べたり複数選手を比較する際は同時に3P%と3PA(3P試投数)も調べると、誤解は少なくなります。

3PAの多さでFG%を下げている代表的な例はステフィン・カリー、デイミアン・リラード、クレイ・トンプソンといったところでしょうか。

2023レギュラーシーズンの平均3PAランキング。58試合以上出場選手対象。

ステフは56試合出場で11.4。

で、シュートには2Pと3Pの他にフリースロー(FT)もあります。FG%もしくは3P%が高くなくともFTを多く高確率に放つ事でシュート効率を上げている選手もいます。高いFG%もしくは3P%と共にFTで更に効率的になっている選手もいます。

3Pが少なくともFTの多さで効率を補っている、もしくは更に高めている代表例はヤニス・アデトクンボ、ジョエル・エンビード、SGA、ジミー・バトラー。
3PとFT両方で効率を高めている例はデイミアン・リラード、ルカ・ドンチッチ、一昔前のジェームズ・ハーデンといった感じです、

2023レギュラーシーズンの平均FTAランキング。58試合以上出場選手対象。

はい。「シュート効率を調べるのにFG%/3P%/FT%に“それぞれの試投数・試投割合”とかメンドイ」、そんな方のためになるのが以下↓

eFG%/TS%

eFG%はeffective Field Goal%の略。文字通り「FGの効率」を表しています。

計算式は

((FGM + (0.5 * 3PM)) / FGA

となります。3PM(3P成功数)に0.5をかけてFGMに足すことで3PMに1.5倍の値を持たせています。こうする事で一々3P%と3PAを調べずともFG効率は調べられるようになります。便利。

2023レギュラーシーズンのeFG%ランキング。

で、eFG%にFTの考慮も加えたのがTS%(True Shooting%)

計算式は

Points/ [2*(Field Goals Attempted+0.44*Free Throws Attempted)]

となります。

「TS%は2P/3P/フリースロー全てを考慮したシュート効率を表している」とだけ覚えていれば、それで充分だと思います。逐一スタッツを調べ回るのが苦行に感じる方にとって、TS%の手軽さは大きな助けとなるはずです。

ただ、TS%は奥深い指標でして、詳しく掘り下げようと思うと非常に長くなります。以前記事にしましたので以下の関連記事を参照して頂くと有難いんですけども

本記事を読んで下さってる方のために少しだけ。

TS%というのは統計学的に言うと「推定値」です。TS%の計算式は実測値とほぼ差の出ない非常に優れた計算式ですが、

Points/ [2*(Field Goals Attempted+0.44*Free Throws Attempted)]

赤字部分の0.44って係数は「ある程度長いスパン・相応のサンプルサイズ」を前提とした係数なので、本来は1試合・短いスパンでのシュート効率を計るのには向いていません。

「2PのFGA5本全て決めて10得点」と「2PのFGA全てでファウルをもらってFTA10本全て決めて10得点」。両方5回シュートを試みて10得点したのは同じですがTS%では前者が100%、後者が113.64%と後者の効率の方が良いように見えてしまいます。なんでこんな事になるかというと、0.44という係数が3PAで得たフリースローやand1の事も考慮した係数だからです。(※)

※:以下補足、余計にややこしくなると思うので気にせずとも忘れても良いです。

より正確に言うと、0.44って係数は全FT中ポゼッションが終わるFTの割合を表しています。なのでポゼッション数を推定する計算式にも用いられています。

Basic Possession Formula=0.96*[(Field Goal Attempts)+(Turnovers)+0.44*(Free Throw Attempts)-(Offensive Rebounds)]

ポゼッション数を求める計算式はもう一つありまして

More Specific Possession Formula=0.5*((Field Goal Attempts + 0.4*Free Throw Attempts – 1.07*(Offensive Rebounds/(Offensive Rebounds + Opponent Defensive Rebounds))*(Field Goal Attempts – FG) + Turnovers) + (Opponent Field Goal Attempts + 0.4*(Opponent Free Throw Attempts) – 1.07*(Opponent Offensive Rebounds)/(Opponent Offensive Rebounds + Defensive Rebounds))*(Opponent Field Goal Attempts – Opponent FG) + Opponent Turnovers))

データサイトによってポゼッション数や各種Rtgに若干の差があったりするのは採用している計算式や測定方法が違うためです。NBA.comPBPstatsのポゼッション数は実測値(実際に数えている)だそうです。どの測定方法も間違いではなく、ファンにとっては誤差レベルなので気にしなくて良いと思います。近年はCleaning The Glassの各種Rtgがガベージタイムのポゼッション・スタッツを省いていて人気ですね。

兎に角この0.44を用いる事で、2Pだけでなく3Pやand1、テクニカルファウルのフリースローも考慮されるようになっています。ただし、最近はTS%考案当初よりも3PAでファウルをもらう事が増えてきたため0.44の係数が疑問視される事もあります。というか2012年の時点でも疑問視されてました。リンク

あー、ややこしい。

閑話休題

1シーズン・長いスパンでは、大体は全FT中3Pで得たFTやand1で得たFTの割合が0.44の係数に即したものになりますが、短いスパンだと誤差がデカくなっちゃう事が多くなるんです。噛み砕いて言うと、「2PのFGAで得たFTを過大評価する」んです。

2PのFGAで得た2本のFTばかりで多く得点を重ねた選手のTS%は実際のシュート効率よりも高くなっちゃうって事です。

ただ、FG%/3P%/FT%だけを並べて見るよりはTS%の方が手っ取り早いし、誤解も少ないと思います。上記留意点もよっっぽど極端に2PのFTばかりじゃなければ微々たる誤差ですし、短いスパンでも考慮して見れば良いだけです。

「TS%は2P/3P/フリースロー全てを考慮したシュート効率を表している超便利な指標。でも短いスパンで見る時・使う時は気をつけて」

まとめるとこんな感じですかね。少しのつもりが長くなっちゃいました。ごめんなさい。

謝るジェイレン・ブランソン。

2023レギュラーシーズンのTS%ランキング。

ちなみにTS%の右列3PArは「FGA中の3PA割合」、FTrは「FGAに対するFTAの割合」。選手の得点パターンを知るのにそれなりに有用なスタッツです。

とりあえず以上。

上記スタッツ・指標たち共通の留意点には

PPG/FG%/3P%/FT%/eFG%/TS%は「1試合あたりでの得点量」「各シュートを成功させた確率」「シュート効率」を表してはいるけれど、それは必ずしも「シュートの上手さ」を表しているわけではない

ってのがあります。

ミッドレンジ・3P・セルフクリエイトが苦手でリム近辺(アリウープ含む)でしかシュート打たない選手、ワイドオープンでキャッチ&シュート3Pを多く打つ選手の各種%は高くなる傾向にあります。勿論それはそれで“ゴール下での優秀さの証”だったり“ロールマン・リムフィニッシャー・ロブキャッチャーとしての優秀さの証”だったり“スポットアップ・ステーショナリーシューターとしての優秀さの証”だったりしますので素晴らしい事には違いないです。いや、超素晴らしいです。

歴代シングルシーズンTS%ランキング。以下全て2023/10/16時点

歴代キャリアTS%ランキング

現役キャリアTS%ランキング

歴代キャリアeFG%%ランキング

ルディ・ゴベア、ミッチェル・ロビンソン、ディアンドレ・ジョーダンのTS%やeFG%は勿論素晴らしいですけど、ただその数値だけを根拠にして

「ルディ・ゴベアやミッチェル・ロビンソンやディアンドレ・ジョーダンはステフィン・カリー、ケビン・デュラント、ニコラ・ヨキッチらよりもシュートが上手い」

とは言えないでしょう。

どの位置から、どういったプレイタイプで、どの程度の頻度で打っているのかも考慮しないと「シュートの上手さ」は推し量れません。

2022レギュラーシーズン、ルディ・ゴベアのトゥルーシューティングチャート(FTを得た位置含めたショットチャート)とプレイタイプ毎のPPP(Point Per Possession、1ポゼッションあたりでの得点)

2020レギュラーシーズン、ミッチェル・ロビンソンのトゥルーシューティングチャートとプレイタイプ毎のPPP

2016レギュラーシーズン、ステフィン・カリーのトゥルーシューティングチャートとプレイタイプ毎のPPP

2017レギュラーシーズン、ケビン・デュラントのトゥルーシューティングチャートとプレイタイプ毎のPPP

2023レギュラーシーズン、ニコラ・ヨキッチのトゥルーシューティングチャートとプレイタイプ毎のPPP

他にもUSG%、セルフクリエイト率、ショットセレクション、ショットクオリティ、被アシスト率etc.「シュートの上手さ」の評価材料は多岐に渡ります。

何より上記スタッツ・指標・ショットチャートは全てレギュラーシーズンのもので、より対策をとられディフェンスがタフになり疲労も蓄積するプレイオフでの成績は含まれておりません。

レギュラーシーズンとプレイオフで大きな差が出る選手も存在します。良い意味でも悪い意味でも。

さらにプレイオフでのスタッツはサンプルサイズの違いや対戦相手の違いがレギュラーシーズン以上に出やすいので尚更比較が難しくなります。

・・・・・・

・・・・・はい。キリがないですね。

それだけ「シュートの上手さ」を推し量る材料というのは豊富で、その手の事を調べるのが好きな人間からすると宝の山なわけです。見たい選手、見たいチーム、見たい試合も増える一方となります。あらゆる評価にアイテストは欠かせませんからね。

あらゆるスタッツ/指標はコンテキストが大事で、多角的に用いることが求められます

いつもの標語で締めたところで

今回はこの辺で。ではまた。

余談。

ホントはUSG%とかオン/オフスタッツとかラインナップスタッツとか総合指標とかについても書こうと思ったんですけど、また話が脱線&余計に長くなる悪癖が出まして書ききれなくなっちゃいました。

この際【NBAスタッツ・指標解説シリーズ】としてシリーズ化して、少しづつ紹介していけたらと考えております。正直「解説」と言うと僭越に過ぎる気がしますが、皆様と一緒に勉強していく心持ちで記事を書いていこうと思います。

今後ともヨロシクお願いいたします。

レブロンと八村もヨロシク言ってます(言ってません)

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