NBAにおける身体能力についてのアレコレとNBA歴代垂直跳びランキングとetc./ヤニス、レブロン、ヨキッチ、MJ、ハロルド・マイナーetc.
以下NBAドラフトコンバインでの歴代Max vertical leap助走ありの垂直跳びランキング。2022/5/19時点。(2000年以前は非公開なので含まれず)
ザイオンやらジャ・モラントやら、いそうでいない名前が多いですよね。
何故彼らジャンプ力がありそうな選手の名前がないかと言うと、上位指名が確実な選手は大抵ドラフトコンバインに参加しないからです。
不参加の理由は様々。
ただ上位指名が確実って事は指名順位の上がり幅が少ないわけですから、わざわざ評価を下げるリスクを負いたくないって事もあるでしょう。
コンバイン参加選手同士での練習試合もあって、見てる側からすれば面白いんですけどね。出身大学コーチのほのぼのインタビューとかもあって。’22ドラフトコンバイン練習試合#1へのリンク
Sportskeedaによる歴代Max vertical leap助走ありの垂直跳びランキングは以下。
1. マイケル・ジョーダン – 48インチ(121.9cm)
2. ダレル・グリフィス – 48インチ(121.9cm)
3.ジェイソン・リチャードソン – 46.5インチ(118.1cm)
4. アンソニー“スパッド”ウェッブ – 46インチ(116.8cm)
5. ジェームス・ホワイト – 46インチ(116.8cm)
6.ザック・ラヴィーン – 46インチ(116.8cm)
7. シャノン・ブラウン – 44.5 インチ(113cm)
8. ハロルド・マイナー – 44インチ(111.8cm)
9. ディー・ブラウン – 44インチ(111.8cm)
10. アンドリュー・ウィギンズ – 44インチ(111.8cm)
新旧スラムダンカ―勢ぞろい、といった趣ですね。
ハロルド・マイナーとか「一発屋」「悲運不遇のスラムダンカー」みたいな感じで語られる事が多いですけど、「昔を懐かしむ系の話題/記事」でしょっちゅう目にしますので「最早“一発屋”でもないし懐かしくもないような?」と思ったりします。“ベイビー・ジョーダン”ってニックネームがインパクトあって耳目を集めやすいからですかね。
上記Sportskeeda含めどれも非公式というか計測方法がアヤフヤなものが多く、「あれ?アイツや○○は?」って選手も多いです。
ちなみにレブロンは 44インチ(111.8cm)、ザイオンは45インチ(114.3cm)とされています。
Epokperformanceでは「意外に垂直跳びの高くない選手」として3選手を紹介。
ドウェイン・ウェイド – 36インチ(91.4cm)
ラッセル・ウェストブルック – 36.5インチ(92.7cm)
コービー・ブライアント – 38インチ(96.5cm)
・・・・・・・・ほんとぉ?
垂直跳びも「Max vertical leap助走ありの垂直跳び」や「Standing vertical jump助走なし垂直跳び」やら色々あって調べる時ややこしいです。単にvertical leap/jumpとしか書かれていない場合が殆どなので「どれ?」ってなります。ラスやコービーが低いのももしやStanding vertical jumpだからでは・・・・・・・。
あ、ちなみにウィルト・チェンバレンは本人によれば48インチ(121.9cm)らしいですよ。凄い!
・・・・・・・・・John Evansの映像分析によれば実際は38〜41インチだそうです。7フッターがコービーやラス並みのジャンプ力持ってるってだけで充分化け物。
最近は映像復元技術も高まって、’60’70年代の綺麗な動画もよく目にしますが、チェンバレンのタッチって思いのほかソフトなんですよね。ダンクが嫌われた時代なのもあって、滑らかなフィンガーロールも多いです。
とりあえず以上。
今回はこの辺で。ではまた。
以下はオマケというかコラムというか忘備録的な何かです。そこそこ長くて、いつにもまして取っ散らかってるので読む方はご留意を。
“Athleticism”アスレティシズムって具体的に何だろう?
“Athlete”アスリート。“Athletic”アスレティック。“Athleticism”アスレティシズム。
NBAのみならずスポーツでよく見聞きする、これらの単語。奥深くて興味深くて、そして難しいです。
“Athlete”アスリートは単純に「運動する人」または「運動を生業とする人」を意味する事が殆どです。わかりやすいですね。
問題は“Athletic”アスレティックと“Athleticism”アスレティシズム。
わかりやすく“身体能力”と訳しましょう。(“運動能力”とも訳され、意味に違いもありますが“身体能力”の方が本記事ではわかりやすく、都合が良いので)
“Athleticismアスレティシズム”“身体能力”に焦点を当てて、少し語りたいと思います。
2022/11/17現在のNBAで「身体能力の高い選手」と言えば、ヤニス・アデトクンボ。
身長213cm、体重110kg、ウィングスパン221cm、スタンディングリーチ279cm。(参照するサイトにより誤差があります)
“高さ”と“長さ”と“重さ”を兼ね備えた肉体、素晴らしい身体能力ですね。
・・・・・・ん?
他に身長211cm、体重129kg、ウィングスパン221cm、スタンディングリーチ282cmの選手がいますね。
間違えました。
ニコラ・ヨキッチも“高さ”と“長さ”と“重さ”を兼ね備えた肉体を持っているではありませんか。
しかし「ニコラ・ヨキッチの身体能力は高い」と見なされる事はあまりありません。
何故か。
恐らく、人は“Athleticismアスレティシズム”“身体能力”という言葉の中に「ジャンプ力」や「速さ」なども含めるからです。
ヨキッチにはヤニスほどのジャンプ力もなければストライドもありません。
ヤニスのMax vertical reach最高垂直到達点は約371cmにもなります。
一方ヨキッチは・・・・・・ご覧の有様である↓。
ヤニスとヨキッチも“肉体的には”同じく「高い身体能力を持っている」と言えると思います。
しかし、その肉体から出力される部分に大きな隔たりがある。ジャンプ力やドライブでのスピードですね。
肉体的な身体能力と出力的な身体能力。ヤニスは両方優れていて、ヨキッチは肉体的な身体能力のみ優れているという事でしょうか。
一言で“身体能力”と言っても様々なカテゴライズが可能です。
著名なバスケットボールアナリストBen Taylorベン・テイラーは自身のポッドキャストThinking Basketballでバスケットボールにおける身体能力を大きく分けて3種類にカテゴライズしました。
1.ハード・アスレティシズム
2.ソフト・アスレティシズム
3.コグニティブ・アスレティシズム
以下1.ハード・アスレティシズムについて紹介/語っていこうと思います。
ベン・テイラーはこのハード・アスレティシズムをさらに4つに細分化して説明。
まず1つ目。strength力/強さ。他選手と接触した際のポジション/バランスをキープする力、それらを崩す力etc.の事。
ヤニスは勿論、ヨキッチもstrength力/強さの分野に関しては優れていると言えます。他選手との対比で「技巧派」みたいな呼ばれ方をされる事も多いですし実際高い技術を持っていますが、バックダウンやbully ball(サイズやパワーで圧倒するようなプレイ)も行います。それもフィニッシュはソフトタッチなので、やっぱり「力強い」って印象は持たれにくいのでしょうか。
ベン・テイラーはstrength力/強さに優れた例としてシャキール・オニールを挙げておりましたが、ガードの中ではマーカス・スマートの名前も挙げていました。
ガードでありながらstrength力/強さを持ち合わせている事が当たり負けせずミスマッチを少なくし、ひいてはセルティックスの隙の少ないディフェンスを可能にしているのでしょう(フロップ時は派手に跳びますけども)。グラント・ウィリアムズも身長はありませんが力強いイメージあります。
2つ目。change of direction(pace)速度/進行方向の変化。ドライブやカッティング、攻守オン・オフボールでのスピード/鋭さetc.の事。
このchange of direction速度/進行方向の変化って言葉は訳し方に困ると言いますか、あまり一般的ではない概念/身体能力かもしれません。雑に言えば「スピード」になりますが、「スピード」と言うと「直線的な速さ」や「速い動き」をイメージしがちです。change of direction速度/進行方向の変化は「直線的な速さ」や「速い動き」だけでなく「加速度」「緩急/方向転換のスムーズさ」なども加えた概念です。
ベン・テイラーはchange of direction速度/進行方向の変化に優れた例としてマヌ・ジノビリを挙げておりました。
change of direction速度/進行方向の変化の意味がイメージしやすくなる名前ですね。現役ではジャ・モラント、ドノバンミッチェル。私にとって意外な名前ですとエバン・モーブリーも挙げられていました。change of paceでは勿論ルカ・ドンチッチやジェームズ・ハーデン。
ジノビリよりも速い選手は沢山いると思いますが、緩急や方向転換のスムーズさは史上でも屈指と言えるでしょう。ユーロステップが良い例ですね。
いや、記事を書くの中断してジノビリのハイライト見返しましたけど、確かに速度/進行方向の変化が凄いです。一歩でディフェンスを置き去りにするのではなく、ヌルヌルッて感じで抜いたりヘルプやダブルチームを割ってリムに到達しちゃいます。
バスケにおけるchange of direction速度/進行方向の変化、スピードにまつわる単語は非常に多いです。
どれも意味に微妙に違いがある上に、人によって解釈も違うので把握するのが大変です。
quicknessクイックネス敏捷性、explosivenessエクスプロッシブネス瞬間的な敏捷性、agilityアジリティ機敏さ、accelerationアクセラレイション加速性能、decelerationデセラレイション減速性能、dexterityデクステリティ緩急を操る巧みさ。等々複雑に多くの要素が絡んでいます。(日本語訳はバスケ向きに訳したものですから受験生の方は参考にしないで下さいね)
それぞれの「速さ」「スピード」でのNo.1の選手を探してみるのも面白いかもしれません。
3つ目。vertical plane athleticism垂直方向への身体能力。最高到達点の高さ、垂直跳びの高さ、そこへ至るまでの速さ、ジャンプする際の溜めの時間、セカンドジャンプ(リバウンドやプットバック時によく見られる小刻みな跳躍)の高さや速さetc.の事。
これまた複雑な分野です。
ドラフトコンバインでの垂直跳び関連の数字を見るとワクワクします。「この選手めっちゃ高く跳ぶな、熱いダンクを見せてくれるかも」てな具合に。
ところがどっこい、実際の試合を観てみるとその選手の「高い垂直跳び」には「長い予備動作と時間」が必要で、いつまでたっても披露する機会が得られず、なんて事もざらにあります。
こういったケースは「垂直跳びの高さ」に優れていはいても「そこへ至るまでの速さ」「ジャンプする際の溜めの時間」には優れていなかったって事になりますね。
ベン・テイラーはvertical plane athleticism垂直方向への身体能力の優れた例としてロバート・ウィリアムズ3世を挙げています。リーグ屈指のロブスレットであり、ディフェンスにおいても高さと反応の良さを見せていました。昨季’22ファイナルではステフの3Pをブロックするシーンも。
同時にチェンバレンやビル・ラッセルの名前も挙げていますし、そこに並べて語られるウィリアムズ3世はまさに“タイムロード”。
この分野は注目も多いですし例を挙げればキリがないですよね。
単純に「高いジャンプ力」って言葉で私がイメージするのはこれ↓。
とこれ。
たまらん。
最後4つ目。pliability柔軟性。体の柔らかさ、怪我への耐性etc.の事。
外から眺めるだけではわかりづらい部分ですよね。
pliability柔軟性とはまた違うでしょうがディケンベ・ムトンボのフックショットは観てて「かったいな、動きが」と思った思い出。ロビン・ロペスのフックショットも似たような印象ですけど、’21ロビン・ロペスのフックショットは147/224の64.5%と確率が凄まじかったです。64.5%でも低く感じるくらいオートマティックに決めてた印象。
最近はステップバックやフェイダウェイなんて当たり前に見かけますけど、これもpliability柔軟性向上の表れですかね。ディフェンス側にも似たような能力が求められるでしょうし、大変そうです。
ベン・テイラーは優れた例としてマイケル・ジョーダンとレブロン・ジェームズを挙げています(MJの名前はvertical plane athleticism垂直方向への身体能力で挙げようとも思ったけどpliability柔軟性にとっておいた、とのこと)。
ミカル・ブリッジズの名前も。NBAデビュー以降一度も欠場なし。昨季レギュラーシーズン総出場時間リーグ1位。2022/11/18時点で358試合連続出場中。・・・・どころかカレッジ時代も欠場なし。
見た目細身でインタビューやベンチでの振る舞いは“陽気なお兄ちゃん”なんですけど、中身アイアンマン。
この写真↓、やたら神々しくて好き。
今回は以上!
1.ハード・アスレティシズム
2.ソフト・アスレティシズム
3.コグニティブ・アスレティシズム
の内1.ハード・アスレティシズムについてしか紹介していませんが続きはまだ別の機会にでも。流石に長すぎて見辛く読み辛くなっちゃってますからね。
「元の意見が聞きたい」って方はi TunesかSpotifyでThinking Basketball“#135 Basketball Athleticism with Eric Leidersdorf & Evan Zaucha”を検索して頂ければ。
記事作成上省いた部分含め聞き応えたっぷりです。(私の拙いリスニング能力でも聞き取りやすい英語です)
ベン・テイラーはyou tubeチャンネルも持っているのでそちらもオススメ→リンク。こちらは「英語は全くダメ」って方でも、視覚的にわかりやすく説明してくれてる動画ばかりなので万人にオススメです。NBAと公式にコラボした動画は特にオススメ→リンク。
今回はこの辺で。ではまた。次回からはもっと短く/読みやすくまとめるよう気をつけます。